「完全に失敗」の対ロシア制裁に、新たな手段 中国経由の抜け道封じに一定の成果、さらなる課題も
バイデン政権は2月には、ウクライナ侵攻から2年が経過したことに加え、ロシアの反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏が死亡したことを受け、さらなる制裁を発表。ロシアのほか、中国やトルコなどの企業を制裁対象に加えた。 EUも2月、対ロシアで13回目となる追加制裁を発表。軍事転用可能な電子製品などをロシアに輸出したとして、初めて中国企業3社を制裁対象に加えた。 ▽思いがけない成果 双方の首脳が「制限のない」パートナーシップをうたう中ロ関係。ロシアのウクライナ侵攻以来、貿易額の伸びは加速し、中国の税関当局によると、昨年の中ロの貿易額は前年比26・3%増の約2400億ドル(約37兆円)に達した。 しかし、米国による2次制裁開始以降、状況は一変した。米ブルームバーグ通信によると、拡大を続けてきた中国の対ロ輸出は今年3月、前年同月比16%減となり、22年9月以来、初の減少を記録した。 ロイター通信は5日、中国の銀行がロシア産原油の貿易決済に消極的であることから、ロシア産原油代金の中国での決済が大きく遅れる事態が生じていると報じた。
4月に中国を訪れたイエレン米財務長官は、記者会見で、ロシアとの重大取引を促進する銀行は、米国の制裁リスクにさらされることになると、あらためて中国にくぎを刺した。 ▽さらなる抜け道 ロシア経済などの調査・分析を行っているシンクタンク「ロシアNIS経済研究所」の中居孝文所長は「モノではなく金の流れを規制する制裁で、トルコなどでも同様に銀行が取引を控えロシアとの貿易額が減少する動きがあり、一定の成果を挙げている」と評価する。 一方で、「ドル決裁が不可欠の大手銀行は米国の2次制裁を恐れロシアとの取引を手控えるだろうが、そうではない中小の金融機関には効果を上げないかもしれない」と指摘。さらに「中ロ間ではすでに米ドルではなく、(中国とロシアの通貨である)人民元、ルーブルによる決裁が中心となっていることを考えると、効果には限りがある。今後、抜け道を完全にふさぐのは難しい」と語る。