「完全に失敗」の対ロシア制裁に、新たな手段 中国経由の抜け道封じに一定の成果、さらなる課題も
ロシア通関統計によると、22年2月に650万ドル(約10億円)相当だった中国からの製品輸出額は、利用可能な最新のデータがある23年7月には6800万ドルと急上昇。ロシアが輸入するCNC機器全体に占める割合も、12%から57%に上昇した。 作業工程をコンピューターで制御するCNC機器は民生品と同様、ミサイルや軍事用無人機(ドローン)などの軍需品の性能・品質向上に不可欠とされている。 中国側は重ねて、ロシアに軍需品は提供していないと主張しているが、軍民両用(デュアルユース)の製品が軍事用に転用されているとの指摘は多い。欧州委員会制裁履行特使のデービッド・オサリバン氏は昨年9月、集積回路(IC)やフラッシュメモリーなど軍事分野にも転用可能なハイテク物資の7割が中国を経由してロシアに供給されていると強調した。 ベルリンなどに拠点を置き新興国の経済ニュースなどを伝えるbneインテリニュースは今年1月、「第三国を通じた迂回ルートなどにより、ロシアに対するハイテク製品禁輸制裁は完全に失敗した」と論評した。 ▽恐れる
軍需品輸出をいくら取り締まろうとしても、民生品を転用されたり、第三国を通じて迂回されたり、製品品目を偽ったりなどされれば、全てを把握するのは難しい。 こうした結果、米国は対ロ制裁で新しいアプローチを打ち出すことになった。バイデン政権は昨年12月22日、新たな対ロ制裁を発表。ロシアの軍事侵攻や制裁逃れに加担する金融取引に関わったり、取引を促進したりした第三国の金融機関に2次制裁を科すことを可能とした。制裁が科せられれば、銀行などはドル決済の道を事実上閉ざされ、外国企業との決済業務が困難になるなど経営に大きな影響が及ぶ。 旧ソ連諸国の問題を研究する米シンクタンク、ウッドロウ・ウィルソン・センター・ケナン研究所によると、今年2月に入りロシアとの取引高が多かった中国の浙江長州商業銀行がロシアの顧客との取引を停止したのをきっかけに、中国4大銀行のうち中国工商銀行、中国建設銀行、中国銀行の3行が制裁を受けたロシア企業との取引を停止。いずれも米国の2次制裁を恐れたものとみられる。