日銀・黒田総裁会見12月20日(全文1)「緩やかな回復基調を続けている」
日銀の黒田東彦総裁が20日午後3時半から記者会見し、金融政策決定会合での決定内容について説明する。 【中継録画】日銀・黒田総裁が会見 金融政策は据え置き 同会合では短期金利はマイナス0.1%、長期金利はゼロ%程度で推移させるという現行政策を維持することを決めた。景気の現状判断については「緩やかな回復基調を続けている」とし、これまでの表現から引き上げた。
会合結果「現状維持」を決定した背景は
共同通信:幹事社の共同通信です。よろしくお願いします。冒頭、3つ質問させていただきます。まず、今回の決定の背景について、簡潔にお聞かせください。 黒田:はい。本日の決定会合では長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールの下で、これまでの金融市場調節方針を維持するということを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について日本銀行当座預金のうち、政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利について10年後の国債金利が0%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを行います。買い入れ額については、おおむね現状程度の買い入れ額で、すなわち、保有残高の増加額、年間約108兆円をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営することとします。また、長期国債以外の資産買い入れに関しては、これまでの買い入れ方針を継続することを賛成多数で決定しました。 わが国の景気については、緩やかな回復基調を続けていると前回対比、判断を一歩進めました。やや詳しく申し上げますと、海外経済は新興国の一部に弱さが残るものの、緩やかな成長が続いています。そうした下で輸出は持ち直しています。国内需要の面では、企業収益が高水準で推移し、状況感も幾分改善する中で、設備投資は緩やかな増加基調にあります。また、雇用・所属環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直しを続けています。この間、鉱業投資は横ばい圏内の動きとなっています。 以上の内外需要の緩やかな増加に加え、在庫調整の進捗を反映して、鉱工業生産は持ち直しています。また、金融環境については極めて緩和した状態にあります。先行きについては、わが国経済は緩やかな拡大に転じていくとみられます。国内需要は極めて緩和的な金融環境や、政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業、家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続する下で、増加基調をたどると考えています。輸出も海外経済の改善を背景として、基調として緩やかに増加するとみられます。 物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は小幅のマイナスとなっています。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いています。先行きについては、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から当面、小幅のマイナスないし、0%程度で推移するとみられますが、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。 リスク要因としては、中国をはじめとする新興国、資源国の動向。米国経済の動向や、その下での金融政策運営が国際金融市場に及ぼす影響。英国のEU離脱問題の帰趨やその影響。金融セクターを含む欧州債務問題の展開。地政学的リスクなどが挙げられます。日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。 また、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続します。今後とも経済・物価・金融情勢を踏まえ物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行います。