禅美術の名宝展に、伊藤若冲の「鷲図」と「旭日雄鶏図」が登場
東京国立博物館平成館(東京・上野)で27日まで、特別展「禅ー心をかたちにー」が開催されている。8日より展示替えが行われ、日本でいま、最も人気のある日本画家、伊藤若冲(じゃくちゅう、1716-1800)の「鷲図」と「旭日雄鶏図(きょくじつゆうけいず)」が特別展示されている。この2作品は日本画の収集家、米国のエツコ&ジョー・プライス夫妻の厚意により急きょ特別出品されたものだ。 朝日の元に凛々しく佇む雄鶏の姿の「旭日雄鶏図」は壮年期に、落ち着いた色彩の「鷲図」は最晩年期に描かれた自画像とも評されている。 禅に傾倒した若冲は30代半ばから若冲居士(こじ)と称して禅に帰依し、剃髪して肉食妻帯を避けた。深交を結んだ大典和尚の相国寺(しょうこくじ、京都市上京区)には代表作の「動植綵絵(さいえ)」を「釈迦三尊像」とともに寄進し、鹿苑寺(通称は金閣寺)には障壁画を描き、父母とを自身の墓は同寺内に建てたという。また、晩年には海宝寺(京都市伏見区)に障壁画を描き、五百羅漢の石造を奉納した石峰寺(せきほうじ、京都市伏見区)に遺骸が埋葬されるなど、臨済宗・黄檗(おうばく)宗との関わりは深かった。
同じく後期展示目玉としては雪舟(せっしゅう)とと白隠(はくいん)が描いた2枚の「慧可断臂図(えかだんぴず)」。禅の初祖・達磨(だるま)に慧可(えか)が入門を請うために自らの左腕を切り落として覚悟の意を示す場面が描かれたもので、雪舟は慧可が腕を切り落とした後を、白隠は切り落とす直前の場面を描いている。 同展は臨済・黄檗両宗15派より、禅僧の肖像や墨蹟、仏像、絵画、工芸など国宝19点、重要文化財103点を含む226点の名宝を集めた過去最大規模の禅の展覧会となっている。 難しそうな「禅」だが、臨済宗妙心寺派龍運寺(東京都世田谷区)住職・細川晋輔師は、禅とは何かを得るためにあるのではなく、何かを捨てるためにあるという。同展には気軽に出掛けて来ていただき、「禅のお坊さんからの幸せになれるメッセージを受け取ってもらえたら」と話す。 【開館時間】午前9時30分~午後5時(金曜日は午後8時まで(いずれも入館は閉館の30分前まで)【休館日】月曜日【入館料】一般1600円(1300円)、大学生1200円(900円)、高校生900円(600円)※( )内は20名以上の団体料金中学生以下無料、障害者の方とその介護者1名は無料〔入館の際に障害者手帳などをご提示ください〕