“令和のミスター円”が今明かす「為替介入」の裏側【WBS】
国際金融の司令塔といわれる財務省の財務官を3年勤め、7月に退任した神田前財務官。19日、テレビ東京の単独取材に応じました。為替介入の裏側や日本経済の課題について何を語ったのでしょうか。 【動画】過去最大の円買い介入 4月29日に5兆9,000億円 「“令和のミスター円”と言われていることについて、率直にどう思いますか」(相内優香キャスター) 「私なんか非常に微力なので、光栄であるというより恐縮に思っている」(神田前財務官)
神田前財務官が初めて為替介入を指揮したのは2022年の9月。1年以上前から分析を進めて、踏み切りました。 「2021年7月からグローバルインフレーションでも、世界的に特に欧米、ポンドのイギリスのインフレが顕著になるんじゃないかと。そのときに彼らが急速に金利を上げると円安が進む心配があった。ここら辺(2022年初め)から欧米が金利を上げ始めると、ガンと為替も変動し、ある意味円安が止まらなくなった。1ドル160円、170円...200円。要するに円安をもう止めるものがない。投機だけで動いていたから、ここで為替介入をやらざるを得ない」(神田前財務官) その後、再度円安が進行。一般的には日米の金利差が原因だと言われていますが…。 「金利差相場。実際それは間違っていて、金利差は実はもうこの辺からは縮小しているから、もう明らかに投機なんだが、ここ(2024年7月)でもまた円安が止まらない」(神田前財務官) 「もし介入しなければ1ドル=200円に」(相内キャスター) 「それはそうだと思う」(神田前財務官) 今年の4月から7月にかけて、為替介入を実施。際限ない円安をどうにか食い止めることに成功しました。 「投機筋からは恨まれる側面もあった」(相内キャスター) 「それはおそらくかなり。円を売ろうとするポジションを持っていた人たちには非常な損失を結果として被らせてしまったかもしれない。日本経済、特に普通に暮らしている家計、そして企業の人たちが投機によって、ファンダメンタルズから離れた投機、過度な変動により本来被るべきではない。被った場合には是正をしなければいけない」(神田前財務官) 何を材料に、介入のタイミングを見極めたのでしょうか? 「全てです。可能な限りドル円だけではなく、他のユーロ円や新興国もある。物価、雇用データもたくさんある。可能な情報を全て勘案してやるとしか言いようがない」(神田前財務官) 国際経済を長年分析してきた神田前財務官。世界の中での日本経済の課題をどう見るのでしょうか? 「日本は少子高齢化し、国際競争が苛烈になり非常に厳しい。残された時間はあまりない」(神田前財務官) 一方で金利のある社会が成長のチャンスになると考えています。 「金利が払えない。非常に低い最低賃金でもヒーヒー言っている。『そんなところに投資できますか』と投資家から言われる。低めの金利でもポジティブに金利があれば、そして最低賃金も上げていけば、さらに言うと社会をゆがめているような補助金を整理していけば、自ずと持続可能性のない企業がなくなり、将来性のある賃金を払える企業に資源が集まる。健全な競争の中、楽しく前向きにやっていけば、素晴らしい社会になる可能性はある」(神田前財務官) ※ワールドビジネスサテライト