特別展「はにわ」が東博で開催。同館では約50年ぶりとなる埴輪の展覧会
古墳時代の約350年間、王の古墳に並べられた素焼きの造形物「埴輪(はにわ)」。この埴輪に焦点を当てた、挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展「はにわ」が、東京・上野の東京国立博物館 で開催される。会期は10月16日~12月8日。なお本展は2025年1月21日~5月11日、九州国立博物館に巡回する。 いまから1750年ほど前に制作が始まった埴輪は、時代や地域ごとに個性豊かなものが制作された。なかでも東京国立博物館に所蔵されている国宝《挂甲の武人》は最高傑作とされる。本展はこの《挂甲の武人》が国宝に指定されて50周年を記念し、全国各地から約120件の選りすぐりの埴輪をプロローグ・エピローグと全5章で紹介するものだ。 プロローグ「埴輪の世界」では、そのユニークな姿から広く知られている《埴輪 踊る人々》を、22年から実施していた解体修理完了後初披露する。時代が下るにつれて表現が簡略化され、ゆるやかな姿を表現するようになった、まさに埴輪を象徴する存在を見ることができる。 第1章「王の登場」では、国宝のみで3世紀から6世紀にかけての古墳時代を国宝のみで概説。豪族が用いた金製の装飾具や太刀など、中国大陸や朝鮮半島との影響関係を伺わせる品々を紹介。 第2章「大王の埴輪」は、天皇の系譜に連なる大王たちのためにつくられた、古墳時代の最高水準の技術によって制作された埴輪を展示。第3章「埴輪の造形」は、各地域でつくられた埴輪の多様性を紹介。大王墓の埴輪と遜色ない精巧な埴輪から、人物のヘアスタイルや馬のたてがみなどに独特の造形が見られるものまで、全国の埴輪を紹介する。 第4章「国宝 挂甲の武人とその仲間」は、本展の白眉となる章だ。初めて国宝に指定された埴輪である《挂甲の武人》には、同一の工房で制作された可能性も指摘される、よく似た埴輪が4体ある。本章はこの5体が史上初めて揃う貴重な機会だ。群馬・相川考古館、千葉・国立歴史民俗博物館、奈良・天理大学附属天理参考館、そしてアメリカ・シアトル美術館にそれぞれ所蔵されている《挂甲の武人》が一堂に会すことで、その共通点や差異を堪能することもできるはずだ。 さらに本章では《挂甲の武人》の彩色模型も展示。《挂甲の武人》は2019年まで実施されていた解体修理時の調査で、白、赤、灰の3色に塗り分けられていたことが判明。この調査結果をもとに、実物大で制作当時の姿を再現した彩色模型を展示することで、最新の埴輪の研究結果にも触れることができる。 第5章「物語をつたえる埴輪」は、埴輪が複数の人物や動物を組み合わせて、何かしらの物語を表現していたことに着目。様々な役割を担ったと思われる、多様な姿の埴輪を紹介する。 エピローグ「日本人と埴輪の再開」では、江戸時代以降、考古遺物への興味の高まりとともに埴輪が取り上げられ、現代においても多くの愛好者が生まれていった埴輪受容の系譜をたどる。 東博では約50年ぶりとなる埴輪展。日本人なら誰もが姿とかたちを知っている埴輪の魅力にあらためて迫るものとして、注目が集まりそうだ。