〈遺産総額4,000万円〉子のない専業主婦の遺産を巡り…「夫 vs. 義弟」全面戦争の結末【弁護士が解説】
子どものない夫婦の妻が亡くなり、相続が発生。妻の遺産はおよそ4,000万円の自宅マンションの名義半分と、2,000万円の預貯金です。妻の弟は弁護士を伴い法定通りの遺産分割を要求するなど強硬です。しかし、専業主婦の妻のお金の出どころは、もともと夫の給料だったことから、夫側も譲歩できない状況で…。不動産・相続問題に強い山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。 年金に頼らず「夫婦で65~80歳まで生きる」ための貯蓄額一覧
子のない夫婦…体の弱かった妻が急死
佐藤さん(仮名)という40代の男性が、数カ月前に亡くなった奥様の相続について相談に見えました。亡くなった妻名義の財産のことで、妻の弟とトラブルになってしまったというのです。 佐藤さんと妻には子がなく、妻の両親もすでに亡くなっていますが、妻には兄と弟がいます。そのため、妻の相続人は、夫である佐藤さんと、亡くなった妻のきょうだいの合計3人です。 佐藤さんと妻は、同じ会社に勤務する同僚でしたが、妻は結婚をきっかけに退職し、その後はずっと専業主婦でした。 佐藤さんの勤務先は中堅企業で、とびぬけて給料が高いわけではありません。しかし、佐藤さんの妻はやりくり上手で、しっかりと預金を積み上げました。 平穏な毎日を送り、老後の資産形成も着実と進んでいた佐藤さん夫婦ですが、妻の死がすべてを中断してしまいました。 「風邪から肺炎になり、あっという間のことでした」
専業主婦の妻の財産は、もともと「夫の給料」が原資
妻の死に大変なショックを受けた佐藤さんですが、やるべき事務的な手続きはどんどん押し寄せてきます。相続手続きもそのひとつでした。 「妻名義の財産について、妻の弟と揉めているのです」 佐藤さん夫妻には子どもがいないことから、相続人は夫である佐藤さんと、妻の兄・弟の3人です。法定相続分通りに遺産を分割すると、佐藤さんが4分の3、妻の兄弟は4分の1をそれぞれ分けるので、8分の1ずつになります。 しかし、問題は妻の財産の中身でした。妻の財産は、およそ4,000万円の自宅マンションの名義が半分、あとは生活費を元手に積み上げた、約2,000万円の預貯金です。 しかし、これらは佐藤さんが渡した生活費が原資となっています。実際には名義預金といえる状態です。 また、マンションは名義こそ共有ですが、ローンを引いていたのは佐藤さん単独で、佐藤さんだけが借金を背負っている状態です。 「もとをただせば、妻名義の財産の出どころは私の給料です。本来、妻の兄弟にはかかわりのない資産ですし、渡す義理もないはずです。これまで交流があったわけでもなく、妻がいなくなればただの他人なわけですよ」