【RTU】準決勝に向かう河名マスト「苦しい試合をする準備も、覚悟も出来ている」、金メダリスト文田健一郎のそり投げも語る
2024年8月23日(日本時間24日朝10時~)、米国ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXにて開催される『ROAD TO UFC シーズン3』(U-NEXT配信)のフェザー級準決勝で、河名マスト(日本/ロータス世田谷)がシェ・ビン(中国)と対戦する。 【写真】現地ラスベガスからインタビユーに答える河名 レスリング・グレコローマンスタイルのU-23世界選手権で金メダルを獲得し、2021年7月にプロMMAデビューを果たした河名は、2024年2月にGLADIATORフェザー級王者となり、『ROAD TO UFC』に出場。1回戦で韓国AFC王者ソン・ヨンジェと対戦し、打撃を被弾しながらもヒジ打ちや左ストレートで反撃。得意のMMAレスリングで判定勝ちをもぎとっている。29歳。 対するシェ・ビンは、ONE Championshipで7連勝後に『コンテンダーシリーズ2021』、続けて『ROAD TO UFC 2022』にも出場している中国期待の26歳。UFC登竜門で敗れたものの、3連勝で再び今回のチャンスを掴み、『ROAD TO UFC 2024』1回戦で同じ中国のイーブーゲラに判定勝利。準決勝に駒を進めた。 24日の試合に向け、ラスベガス入りした河名は、「相手をいかに沼に引きずり込めるか。最後には僕だけ沼から出てくる」とタフファイトを勝ち切る覚悟を語った。 ◆暗いトンネルから見えた光に向かって突き進んだ ――レスリングではU23世界選手権優勝(2017年ポーランド・グレコローマン/59kg級)など国際試合も豊富な河名選手ですが、いまそちらにいるラスベガスは初めてですか? 「初めてです。アメリカはコロラドスプリングスというアメリカのナショナルトレーニングセンターに一度行きました」 ──デーブ・シュルツ記念国際大会(同級優勝)ですよね。ラスベガスはコロラドスプリングスほど標高は高くないですが、暑さと乾燥しているかと思いますが、いかがですか。 「乾燥しているので、自分で思っているより、自分の体感の発汗量よりは汗かいてたりとか、水分の抜けがあったり、あとは昨日(20日)初日の動き出しでどうしてもちょっと疲れやすいなとか、呼吸がきついなというのはありました」 ――今回その点ではセコンドの中村倫也選手がラスベガスのUFC APEX大会を経験済みなので、心強いですね。 「そうですね。倫也にはトレーニングをお願いしてたんですけど……なんと彼は体調を崩したので(苦笑)、今日は八隅(孝平・ロータス世田谷代表)さんと2人で調整しました」 ――あっ、そんなことが。八隅さんが無事でよかったです。これから水抜きですか? 「そうですね。こっちが今火曜日の夜で、計量が木曜日なので、明日1日ゆっくりして、木曜日の朝に落として、そのまま計量に行こうかなと思ってます」 ――レスリング時代は2日にわたる大会では、計量も2回行われていたわけで、いまフェザー級の河名選手は減量慣れしているようにも感じます。ところで河名選手は試合前でしたが、オリンピックもチェックされていたのでしょうか。印象に残った試合などもありましたか。 「やっぱり文田(健一郎)選手、60kgのグレコの文田選手は、僕が高校生のときからずっと勝てなかった選手で、彼は前回東京オリンピックで銀メダルから、今回金を取りきったのは、あらためてやっぱり強かったんだなというのは感じています」 ――準決勝のジョラマン・シャルシェンベコフ戦で、先行されたなかでのあのクラッチでそり投げが出るというのは……。 「前回、東京オリンピックの決勝で、自分のそり投げを封印されている中で、世界選手権でキルギスの選手に敗れてそこから──これは僕のめっちゃ勝手な憶測ですけど、これまでは“待ってそり投げ”するような感じだったのが、もうどんどん差して、自分から前に出てプレッシャーかけてるから、相手が嫌々、差し返したときに“はい、待ってました”でそり投げ、というふうに進化しているのかなというのは思いました」 ──なるほど、組みの後の先あるいは、先の後というか、自ら前に出て動いてのカウンターだったのですね。それはMMAにも通じるような動きでしょうか。 「はい、そうですね」 ──河名選手のレスリングの試合を見ていたら、初期の頃はサウスポー構え、つまり右足前だったのが、今はオーソに構えているのはなぜですか? 「右足前はたぶん高校生くらいまではずっと右構えで、いわゆるサウスポーで構えてたんですけど、大学に入ってスイッチしてたというか、わざと喧嘩四つになるように常に構えていて、でも大学入ってからどちらか固めようという話を大学のコーチとしたときに、左手が利き手というのもあって、左構え──今のオーソドックスになりました」 ――ということは、前回のソン・ヨンジェとの試合でも最終ラウンドに反撃の口火を切った、オーソからスイッチしての左というのは、リアルサウスポーでの左ストレートということなんですね。 「そうですね。利き手、利き足、全部左なので、身体が自然に動くのはああいうサウスポーの構えのほうが動きやすいです」 ――ただ、MMAで構えるときはオーソのほうがしっくりきているということなんですか? 「レスリングの左構え、いわゆるオーソドックスで構えてて、自分は利き手が前に出てきているので、そこの返しのフックだったりとか、前手でなんとか打撃の攻防だけじゃなくて、組み際、離れ際に力を抜いて打撃を出せるのは左かなというのは思っています」 ――なるほど。1回戦のソン・ヨンジェ戦では、1Rから飛ばす展開でした。あの試合の収穫と課題をどうとらえていますか。 「これまでに1Rで行き切れずに負けて後悔した試合(パン・ジェヒョク戦)があったので、戦略的にはもう1Rから飛ばしていこうという考えがあって、その作戦どおり、一応コントロールは出来たんですけど、逆に自分が腕がパンパンに疲れてしまって。じゃあ、2Rでどうしようという風になって、それがあったからこそ打撃も出たというか、逆に力を抜いた状態で打撃が出せたというのは一つ収穫ではあるという感じです。課題でいうと、もっと相手のコントロールもするのが、足を置く位置だったりとか、テイクダウンの仕方というのはもっとうまくできるんじゃないかというのはありました」 ――腕が限界だった状態だったからこそ、打撃が力を抜いて出せたと。しかし、そんな状態で、わずか1分のインターバルで3Rに回復するものなのでしょうか。 「あれは2Rの最後に、僕の縦ヒジが当たって、相手がひよったのが目に見えて分かったので、もう勝ったという感じですね。あとは畳みかけるしかないなみたいな」 ――それは河名選手にとってレスリング時代に「この形を作れば勝てる」という動きが、MMAのなかでも増えつつあるということでしょうか。 「そうですね。本来だったら組み伏せて、相手が四つんばいになって立てない状態が2分とか3分間ラウンド内で作れたら、もうその試合はコントロールできるなと思うんですけど、前回はそれができない中で、相手が明らかに効いたなとか、ひよったという場面を打撃で作れたので、暗いトンネルから見えた光に向かって突き進んだという感じです。もう1回捕まえれば終わりだ、と3Rに向かえました」 ――それが、あの左縦ヒジだったと。組み際、離れ際のヒジは、選手にもよるのでしょうけどロータス勢を見ていると、首相撲とレスリングの融合が巧みだと感じます。あのヒジは練習をとくにやり込んだというわけではないのでしょうか。 「“絶対このヒジで倒す”というよりは、遊びの中で、一応こういう動きもやっておきましょうとか、もしかしたらあるかもしれないみたいな感じで用意した引き出しが開いたという感じです」 ――それは今回の試合に向けてもそういったものが増えている状況ですか? 「そこはもう基礎・基本の受け返しと距離感の中で、組み際でそのまま縦ヒジなのか、また違ったアプローチなのかというのは考えながらやっていますね」