「自分の演技に集中して毎日を積み重ねていきたい」橋本大輝がいま、大切にしていること
自分の演技に磨きをかける。 それがオリンピックに繫がる
エースが蘇り、まずは団体で優勝する。実は橋本が一番欲しかったのはこれだった。2015年以来8年ぶりの金メダル。弾みがついた。 「個人総合は普通にやれば勝てると思っていました。もう何も考えずに自分のことだけに集中しようと。ただ、床で着地が乱れて大きく減点されて、鞍馬に関してもあまり評価されなかったので、勝負をかけるなら後半の3種目だと考えていました」 跳馬、平行棒、鉄棒。まず跳馬は難度が高いロペスという技を決める。 「空中に出た瞬間に、これは(着地は)止まるって。いつもより(着地する)青いマットや、(中央の)白い線まではっきり見えたんです。ど真ん中に立ったというのがわかった。あのときは、もうこの流れに乗っていくしかないと思いましたね」 平行棒もうまくまとめて着地をピタリと決め、得意の鉄棒はいつもより難度を下げた演技を行い、しっかりと優勝を手中に収めたのである。 「この経験をしたから、今後ケガをしてもモチベーションが落ちることはないと思います。多少痛みがあっても何かしらできることはあるはず。世界一になるために必要な力っていうのは、いろんなところから吸収できると考えています。だから、今も毎日練習できている時間を、とても大切にしているんですよ」 2024年7月からパリ・オリンピックが始まる。橋本は東京オリンピック個人総合で優勝しているので、これも連覇がかかっている。周りの期待も日々大きくなっていくだろう。 「すごい挑戦ができることはわかっています。ただ、あんまり連覇のことは考えすぎずに、自分の演技に集中して毎日を積み重ねていければいいかなと。そうすれば、最後はオリンピックでいい演技ができたって思えることに繫がっていくはずだから。自分の演技に磨きをかける。まず一番重要なのはそこなんですよ」
取材・文/鈴木一朗(初出『Tarzan』No.878・2024年4月18日発売)