ボート競技に溺れた新人女子大生が落ちた闇 「ノーヴィス」ローレン・ハダウェイ監督
ボート競技(ローイング)に魅入られ、狂気のスパイラルに陥ってしまう18歳の女性を描いた「ノーヴィス」。自らの実体験を基に「闘志と執着についての脚本」を書きあげ、「有毒で虐待的な、女性をエンパワーメントする物語」を演出したのはローレン・ハダウェイ監督だ。「目的を見いだす厳しい人間の映画であり、この中に自分自身を見つけ出す人がいることを願う」と語った。 【写真】天気の悪い日の撮影には意味がある「ノーヴィス」撮影現場でのローレン・ハダウェイ監督
困難への歯止めない挑戦
大学1年のアレックスは高校をトップの成績で卒業し、大学では一番苦手な物理を専攻。女子ボート部に入部し「困難だからこそ挑戦する」というJ.F.ケネディの言葉を胸に、自身の限界を超えたい一心で過酷なトレーニングに身を投じる。強すぎる情熱はとどまるところを知らず、スポーツ万能で奨学金を得るために入部したジェイミーと、レギュラーの座をめぐり激しい争いを繰り広げる。ノーヴィスは新入り、初心者のこと。 ハダウェイ監督は「ヘイトフル・エイト」(2015年)、「セッション」(13年)など多くの作品で音響デザイナーとして活躍し、本作で監督デビュー。過剰にローイングに溺れるアレックスを見て、思わず監督は大丈夫なのか、執着はあるのか聞いてしまった。「(アレックスは)10代から30歳ぐらいまでの自分。今はほとんど共感できないが、できる部分も少しある」 20代のころの自分を振り返る。「キャリアや学校が一番大事で、ほかはどうでもいいという感じだった。まあまあとか中庸とかができなかった。自分をチャプターごとに分けて、この夏は徹底的に遊ぶとか、仕事するとか。それが私なりのバランスの取り方だった。適当なところで抑えるやり方は今もできない。オール・オア・ナッシングの中で自分のバランスを壊さないようにしている」 もっとも「年を重ねて多様な人に出会い、友人や恋人を持ち、おいしい食事をとるなど人生の味わいも大切と思うようになった」と聞いて、ホッと安心。アレックスはボートだが、大半の人が大なり小なり、学校だったりキャリアだったり同じような特質はあるという。「特定的であればあるほど普遍的であるといわれる。映画はボートをこぐというニッチな話だが、人間の本質の一端を描いたつもりだ」と話した。