トランプ疑惑と類似?ウォーターゲート事件 坂東太郎のよく分かる時事用語
トランプ米政権に関するいわゆる「ロシア疑惑」をめぐり、大統領が連邦捜査局(FBI)の長官を解任したり、司法妨害が疑われる発言が明るみになるなど、1970年代にアメリカを揺るがした「ウォーターゲート事件」と比較されています。最終的には現職大統領の辞任という事態にまで至ったウォーターゲート事件。いったいどんな事件で、どのような経過をたどったのか。転機となった出来事などを踏まえて振り返ってみました。 【写真】“学級崩壊”状態のトランプ政権 「ロシアゲート」で疑惑報道相次ぐ
下っ端の暴走から政権上層部の疑惑へ
米民主党に“盗聴器”未遂。狭い意味での「ウォーターゲート事件」はこれです。1972年6月、ワシントンにあるウォーターゲートビルに置かれた民主党全国委員会本部に何者かが盗聴器を仕掛けようとして逮捕された不法侵入事件です。68年の大統領選で共和党候補として立候補し、民主党候補を破って大統領に就任したニクソンにとって72年は再選を目指す年でした。 実行犯にはニクソン陣営の再選委員会関係者が含まれていましたが、当時は「下っ端の暴走」という見方が強く大統領も関与を一切否定しました。9月に連邦大陪審が実行犯らを窃盗罪で起訴し、「この話はもう終わり」という雰囲気だったのです。ほぼ『ワシントン・ポスト』のみが、事件の背景にある闇を孤軍奮闘して追いかけていた状態でした。 したがって、11月の大統領選挙でニクソン候補はマサチューセッツ州とワシントンD.Cを取りこぼしただけという歴史的圧勝で再選されました。 風向きが変わったのは、実行犯の1人マッコードの発言です。元中央情報局(CIA)員でニクソン再選委員会の警備を担った男で、1973年3月にワシントン地裁のシリカ判事に「政治的脅迫を受けた。立案者は他にいる」などと伝え、共和党の大統領再選委員長を務めていたミッチェル氏らが事件に関与していたと上院特別委員会で爆弾発言。ミッチェル委員長は前司法長官という大物で、事件は「下っ端の暴走」から一挙に政権上層部の関与への疑惑へと転じていきました。