島々の地域づくり事業協組 実働半年で「卒業生」誕生 奄美市しまワーク
奄美市しまワーク協同組合は2023年5月、奄美市内の8事業者で設立。6月16日付で特定地域づくり事業協同組合(特地事業協組)の知事認定を受けた。設立組合員の職種は農業、旅館・ホテル、イベント企画、食堂・レストラン、観光案内、社会保険労務士事務所。後に一般社団法人あまみ大島観光物産連盟などが加わり、24年度組合員は10事業者。 結成キーパーソンは16~19年度の奄美市地域おこし協力隊、群馬県出身の長瀬悠さん(43)。一緒に来た茨城県出身の妻が奄美大島を気に入り、そのまま定住。特産品の製造企画・販売事業で起業した。 協力隊として観光事業者らと接している中で「人手不足」の声を頻繁に聞き、人材派遣事業を一時検討。即実行とはならなかったが、同時期に和泊町の協力隊だった金城真幸さん(55)=えらぶ島づくり事業協組事務局長=らと情報交換を続けていた。 奄美市で特地事業協組結成に向けて動き出したのは21年。市の担当課と調整し、22年度に3回、市内事業者を対象に説明会を開いた。民間主体で立ち上げる方向で走り出し、長瀬さんが世話人という形で、鹿児島県中小企業団体中央会の知恵を借りながら設立へとこぎ着け、事務局長となった。 「設立に当たって組合の目的の共有に力を注いだ。各事業者の要望にも応えるようにするが、『地域への貢献』が大前提。22年度は説明会と並行して約30事業者を回った」。最大の課題は住居の確保。そしてコロナ禍。「観光事業者などは先の見通しを立てるのが難しそうだった」と振り返る。 設立会員は23年2月に固まった。「地域と業種のバランスを心掛けた。奄美大島5市町村でという話もあったが、職員を派遣する保障ができなかった。まずは奄美市で実績を作ろうということになった」と長瀬さん。 初年度は職員を5人採用し、タンカン園、旅館・ホテルなどに派遣した。住居は長瀬さんが役員を務める通り会の会員事業者や組合員事業者などの協力を得て確保した。 本格的に動き出した半年後。第1号の「卒業生」が出た。派遣先に就職しての定住者で、長瀬さんは「組合としては貴重な人材だが、組合は利益追求組織ではない。双方から話を聞いて、本当にうれしかった」。 清水雅斗さん(28)は静岡県菊川市生まれ。趣味はサーフィン。住宅メーカー系列の外壁製造会社で働いていたが「月曜から土曜まで家と会社の往復で仕事漬け。人生は1回、やりたいことをやろう」と、昨年12月、家財道具一式を愛車に積み込んで沖縄を目指した。 鹿児島新港でフェリーが奄美群島経由と分かり、奄美大島に立ち寄ってみようと、軽い気持ちで降り、島内を巡った。来島3日目、偶然入った居酒屋の経営者に、隣のビルにある組合の長瀬さんを紹介された。そして会員事業者の旅館・ホテル業「ばしゃ山村」で、組合派遣職員として働き始めた。住居は、ばしゃ山村の社員寮。 4月1日付で社員になった。職場はレストランで、勤務時間は午前11時か正午からラストまで。海の様子を見て波乗りポイントを決め、午前10時ごろまでサーフィン。シャワーを浴びて、仕事への日々。 「奄美大島は沖縄県のどこかだと思っていた。もっと情報発信していいのではないか。こんな島があり、こんな暮らしができると。どこかに移り住みたいと思っている人は多いと思う。くれば何とかなる、大丈夫だと。地域づくり事業協同組合は、島暮らしの一つの入り口として、とてもいい制度だと思う」
奄美の南海日日新聞