「キャラクターを生きている人として描きたい」大人気漫画『不運からの最強男』作画・中林ずん先生の原点とは?【インタビュー】
人との出会いにある“運”が今につながる原動力に
――主人公・ジークベルトは転生後に“強運”で困難を乗り越えます。鑑定眼で相手の能力を見抜く素質もありますが、憧れますか? 中林:チャンスに恵まれるのは、うらやましいです。でも、鑑定眼はいらないかな。現実にあったら使ってしまいそうですし、世の中には知らない方がいいこともあるので、私には身に余ります(笑)。でも、誰もがうらやむ能力を持っていますけど、その裏返しで、弱さもあるから周りの力を借りながら困難を乗り越えていますし、自分の力を正しく使っていくまでの成長過程をしっかり描きたいと思っています。
――中林先生自身は“運”に恵まれていると思いますか? 中林:これまで出会った方々で、いい人が多かったんです。漫画家としては『少年サンデー』へ読み切りの作品を送り、佳作をいただいたのがデビューのきっかけで、当時の担当編集の方に紹介していただき、恩師にあたる若木民喜先生のアシスタントになれました。当時があったから、漫画を描き続けられていますし、『サンデーうぇぶり』の『東京軌道エレベーターガール』や、今回の『不運からの最強男』に関わらせていただけたのも、人とのつながりにおける“運”に恵まれていたからだと思っています。 ――原点に立ち返ると、いつからご自身で漫画やイラストを描かれていたのでしょう? 中林:小学生の頃でしょうか。高校時代に進路を考えたとき、飽き性な自分が「ずっと変わらず、絵だけは好きで描き続けている」と思ったんです。卒業後、漫画専門学校に進学したのも純粋に絵を描くのが好きだったからで、プロになれるとは考えていなかったです。学校卒業後に経験を活かして描いた作品が『少年サンデー』で佳作をいただいて、今があります。 ――Xでは、シミュレーションRPG『ファイアーエムブレム』のファンだと公言されていて。ゲームの影響も受けているのかと。 中林:シリーズ通して長く愛している作品で、ファンタジーを描くにあたっての理想でもあります。キャラクターの人生がしっかりと描かれているし、血の通った人間であるのが伝わってくるので、誰が好きというのも惜しいほど全員に愛着が湧くんです。『ファイアーエムブレム』のようなキャラクターを描くために、イラストの修行をしていたといっても過言ではありません。