「キャラクターを生きている人として描きたい」大人気漫画『不運からの最強男』作画・中林ずん先生の原点とは?【インタビュー】
作品を理解するにつれて強まる「生きている人」として描く思い
――編集Tさんに伺いたいのですが、いわゆる「転生モノ」ですが、本作ならではの魅力は何でしょうか? 編集T:コミカライズが動き出す際に原作者のフクフク先生が大切にしたいと仰っていた「家族」や「仲間」との絆を中林先生が汲み取り、キャラクターのこみ上げる想いをあますことなく描かれているところが魅力だと思っています。 また、誰かが壁にぶち当たっても諦めることなく、主人公のジークを筆頭に絆の力で「不運」を「チャンス」に変えて「幸運」を掴んでいく…紙一重だけれども考え方ひとつで物事の行く末が大きく変わっていくのも魅力ですね。私達の生活にも時折現れる壁や試練に対して、それを不運と捉えるかチャンスと捉えるか…読後に運に対する考え方が変わり、目の前の障壁に対して前向きになれるかもしれません。
――編集Tさんがキャラクターの感情をあますことなく描いている点が魅力だとおっしゃっていましたが、小説のコミカライズでは、キャラクターを絵として動かす苦労もあるかと思います。 中林:顔や表情は、小説にある口調や行動からイメージをふくらませて、ラフ画を作り、具体化していきます。異世界に転生した本作の主人公・ジークベルトは、誰よりも先に走り、目標へ向かって動くキャラクター性を重視して、困難に立ち向かっていく“少年漫画の主人公”を意識しています。 ――描いていく中で、愛着がより強くなったキャラクターもいますか? 中林:ジークベルトの兄であるアルベルトと、仲間のニコライです。アルベルトは“ザ・好きなキャラ”で、6巻で人生を深掘りできたのが楽しかったです。ニコライは描き続けながら、歩んできた人生を想像するうちに思い入れが強くなったキャラクターで、4巻では力も入りました。
――描くにあたって、苦労するキャラクターも? 中林:マンジェスタ王国の王太子であるユリウスと、ジークベルトの叔父にあたるヴィリバルトです。単純にイケメンを描くのは苦手で、意識を強く持たないとカッコよくならないし、作画量も多いので、気をつかっています(笑)。