ピース又吉×ごっこ倶楽部が創作論を語り合う 日本で初開催「TikTok Creator Summit」レポート
『TikTok Creator Summit Japan 2024』が9月28日、都内・「虎ノ門ヒルズフォーラム」で開催された。イベントのテーマは「そのクオリティを、超えていけ。」。 【写真】出演した又吉直樹、TikTokクリエイター11組 最近のTikTokではストーリーやカット割りに工夫を凝らした没入感のあるショートムービーが人気だ。カメラワーク、照明演出、BGMなどの複合的な演出が施され、チームで作られている作品も増えている。 ハイクオリティなコンテンツが視聴者に求められている時代に、クリエイターはどのように創作活動を行っているのだろうか。作家の又吉直樹、TikTokクリエイター11組を迎え、トークセッションが開催された。 ・小説とショートムービーは真逆の創り方? ピース又吉×ごっこ倶楽部による異業界トーク ホールの照明が落ちるとスポットライトに照らされたスーツ姿の金髪男性が舞台に現れた。イベントのメインセッションの司会を務めるMC Takaだ。TOEIC970点の英語クリエイターとして活動し、TikTokのフォロワー数は50万人を越える。 「最高の1日にしましょう!」とMC Takaが会場へ呼びかけると、観客席から口笛や歓声が返ってきた。開幕セレモニーを終えると、トークセッションが始まった。 「さっきまでの盛り上がり、飲食店だったら絶対に入りたくない店やな」とお笑いタレント・作家の又吉直樹が会場をイジりながら登場。会場からは笑い声が漏れ聞こえ、和気あいあいとした雰囲気になる。続いてTikTokクリエイターのごっこ倶楽部の志村優、早坂架威が舞台へと現れた。 ごっこ倶楽部は、『日常で忘れがちな小さな愛』をテーマにショートムービーを投稿するクリエイター集団だ。170万人以上のフォロワーを持ち、投稿した動画は100万回再生を越えることも多い。ショートムービーのクリエイター集団として世界を目指しながらハイクオリティなコンテンツをつくり続けている。 そうして異業種クリエイター同士による鼎談が始まった。まず、ごっこ倶楽部の早坂が「コンパクトながら映画と同じ感動を与えられるように、次世代のアートとしてショート動画製作に取り組んでいます」とショートムービーへの想いを語る。 そして、創作のポイントを解説。TikTokのショートムービーをつくる時に心がけているのは「目の占有」「手の占有」「耳の占有」の3点なのだという。 目の占有は、1秒・2秒先を見たくなるような絵づくり。手の占有は、スマホを操作する手を退屈させないこと。視聴者はコメント欄と動画を行き来しながら動画を見る人が多い。コメント欄に移動して他の人の感想を読みたくなるような仕掛けを盛り込んでいるそうだ。耳の占有はSEやBGMへのこだわりで、これら3つの要素を駆使して没入感を演出しつつ、視聴から3秒以内に読後感を予想できるようなショートムービーを製作している。 一方で、「小説の冒頭では世界観をあらわすものーーわかりにくいものをわかりにくいように書くようにしています。本屋で立ち読みした時にピンとこない人に取らせてしまうと互いに不幸になってしまうんで。読んでくれる人を裏切らないように気をつけています」と、又吉は話す。 また、「小説にあったらいいなと思うのは、『言われてみればそんなこと考えたことあるな』くらいの発見ですね」と小説の読者として考えた時に、深層的な共感があるとうれしいと続けた。ショートムービーとコントには見ている人を巻き込むところに共通点があると鼎談は盛り上がっていく。最後に又吉は「刺激的でした」と締めくくった。 ・創作を続けるために TikTok収益化プログラムの紹介 創作活動により生計を立てることができれば、活動は継続し、コンテンツのクオリティも向上する。TikTokではクリエイターにハイクオリティなコンテンツをつくってもらうために、収益化のプログラムやツールを提供しているという。その収益プログラムや収益化の手助けとなるツールについて、各TikTokクリエイターへの紹介があった。 登壇した3組のクリエイターは以下の通り。 ネクストサウナ:日常で起こりそうな場面をもとに妄想で作り上げるコントが話題のユニット。動画の撮影では、視聴者に長さを感じさせないように数秒ごとに興味をひくポイントを作っていると語った。 うざみ:東京・関西のグルメを紹介するグルメクリエイター。「TikTok上半期トレンド大賞2024」で 1 Minute+部門賞を受賞。動画では独創性を重視し、店員さんとのコミュニケーションも撮影。クスッと笑えるおもしろさを盛り込むようにしていると話した。 大川泰雅:TikTokのショートドラマの投稿で人気を集めた後、俳優としてテレビやドラマへと活躍の場を広げる。「TikTok Creator Awards Japan 2023」で「Drama Creator of the Year」を受賞。 長尺動画のための音楽ライブラリの拡充、TikTokクリエイターアカデミーの開始などの取り組みがTikTokより告知され、驚きを現した。 ・TikTok×TikTokをはじめ様々なプラットフォームで活躍するためのヒント 最後に、2つの会場にわかれてイベントが開催された。ひとつ目の会場のテーマは、「感想コンテンツのつくりかた」。最近のTikTokでは映画・ドラマ・アニメ・漫画などの感想を熱量高く語るファンクリエイターコンテンツが人気を集めている。いま注目のジャンルでどのような工夫をしてるのか。映画感想クリエイターのしんのすけ、フミヤ、アニメ感想クリエイターのアニヲタ社長が登壇。感想コンテンツのつくり方についてトークを繰り広げた。 「僕らの動画は扱う作品ありきですが、どのように作品を選んでいますか?」としんのすけからの質問に対して、アニヲタ社長は「トレンド、認知度、ネタ性などをもとに扱う作品を決めている」と回答。ふみやは「ほぼ同じです。ただ、映画の場合、ホラー映画など刺激の強いものが伸びやすい」と返答した。 もうひとつの会場のテーマは、「プラットフォームを越えたコンテンツを作るには?」。日本やTikTokを越えて活躍するクリエイターを招き、マルチプラットフォームで活躍する方法についてセッションが行われた。 登壇したのは、海外フォロワーが95%の割合を占めるTSKASHii、ニコニコ動画・YouTube・TikTokでバズコンテンツを生み続けるラブマツだ。MC TAKAの司会のもと、それぞれの製作方法を語り合った。 「プラットフォームに合わせて編集をする。TikTokでは1分、他のところでは30秒にする」(TAKASHii) 「長めに2パターン取ることもある。時代によってOK・NGの判断が変わるのでコミュニティガイドラインを重視しています。ニコニコ出身なのでふんどしで踊ることもありましたが、いまそれやるとアウトです(笑)」(ラブマツ) 会場からは笑い声も聞こえ、終了後は参加したクリエイター同士で会話をする姿も見られた。 日本で初めて開催となった『TikTok Creator Summit Japan 2024』。各クリエイターの創作の姿勢やプラットフォーム側のデータの共有など多岐にわたるプログラムが開催されたイベントは盛況の内に幕を閉じた。
中 たんぺい