高橋ヨシキが映画『八犬伝』をレビュー!
日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! あの超大作小説を"執筆"と"物語"両面で実写化! * * * 『八犬伝』 評点:★2.5点(5点満点) 伝家の宝刀「キラキラ、ホワワーン」 端的にそれを指し示す語句がないので説明的に書くしかないのだが、ホラー映画のみならず、怪獣映画などでも、誰かの霊体(?)などが、キラキラ、ホワワーンとした善のパワー(?)かオーラ(?)のようなものに包まれて登場、謎めいた力でいろんなあれこれ(誰かが死んだとか)をなんとなく全部解決し、人々を幸せにして成仏する(?)というような場面は本質的にいいかげんで、あまりにも適当だと思わされることがよくある。 2012年の映画『キャビン』では日本における「霊的ハッピーエンド」を端的に表すものとして同様の場面を皮肉たっぷりに取り入れていてギャグとしても秀逸だと思ったが、まさか2024年になって相変わらずのキラキラ、ホワワーンを目にするとは思わなかった。 本作は『南総里見八犬伝』と、それを執筆する滝沢馬琴を並行して描く構造で、ホワワーン部分は『八犬伝』パートすなわち「映画内フィクション」だからOKということなのだろうが、しかし同じことを表現するにせよ別の方法はあったはずだ。 全体に劇中でいう「虚」と「実」、シーンごとのトーンのバランスがちぐはぐなせいもあり、映画全体の印象もホワワーンとぼやけてしまっている。 STORY:江戸時代の作家・滝沢馬琴は、友人の絵師・葛飾北斎に構想中の物語「八犬伝」を語り始める。北斎は物語に夢中になり、下絵を描くように。八犬伝は人気を集め、異例の長期連載へと突入するが、ある日馬琴は失明してしまい...... 原作:山田風太郎監督・脚本:曽利文彦出演:役所広司、内野聖陽、土屋太鳳、渡邊圭祐、鈴木仁ほか上映時間:149分 全国公開中