26歳で突然『高次脳機能障害』に 包丁の刃を持とうとしたりトイレに逆向きに座ったり…障害の中で2人の子育て 同じ苦しみ持つ人の支えに「闘病記」出版
物事が覚えられない、難しいことが考えられない。 そんな障害がありながら、子育てに奮闘する一人の母親が闘病記を出版する。本に込めた母の思いとは。 【写真で見る】「物事が覚えられない」不安の中で生きる母 26歳で脳出血…後遺症を抱え2人の子供を育てる
■脳出血の後遺症を抱えながら子育て
記憶の障害であったりとか、失語とか、長文を理解できなかったりとか。 自らの障害についてこう話すのは、北島麻衣子さん(39歳)。 一見すると分かりにくいが、視界の右半分が見えない上、「高次脳機能障害」がある。 北島さんは26歳の時に突然、脳出血を起こした。一命は取りとめたものの、後遺症として「高次脳機能障害」が残った。 “見えない障害”ともいわれる、高次脳機能障害。 彼女の場合、症状は新しいことを覚えづらい、難しいことが考えられない…。また、段取りを立てることも苦手だ。 北島麻衣子さん:順番が分からなくなるんですよ。何から準備をしたらいいかっていうのが分からなくなるんで。(料理するために)まず材料を用意するじゃないですか。今日はカレーを作る。メニューが決まりました。これから切る、次はこれ切る、次はこれ切るっていう風に、順序を確認してから、最初は紙に書く。どういう順番でやるか、っていうのをやっていました。 また、物の形をうまく認識することもできない。 北島麻衣子さん:包丁って置いてあったら普通にここ(持ち手)を持つじゃないですか。だけど持ち方が分からなくて、最初この刃の部分を持とうとしたり。 今でこそリハビリで改善はされているものの、まだ簡単な料理を作るのにも時間がかかってしまう。 北島さんが脳出血を起こした時は、長女が小学生になる前で、さらに長男を妊娠しているという状況だった。 障害と戦いながらの子育て。さらには、見えない障害だけに周囲に理解されにくく、苦しんできた。
■同じ障害に苦しむ人の支えに…“闘病記”の出版
今年2月のある日、大阪を訪れた北島さん。 障害の影響でうまく道を覚えることができないため、大阪で専門学校に通う長女の菜々美さん(19歳)が付き添っていた。 長女 菜々美さん:1人は不安そうだったので私が送りに来ました。 目的地は「闘病記の森」。1200冊以上の闘病記だけを集めた図書館で、本を集めるだけでなく、出版の手伝いもしている。 北島さんも「闘病記」を出版しようとしているのだ。 北島麻衣子さん:娘が小学1年生になったので、ほぼほぼ私、娘と同じくらいの言語レベルだったんですよね、最初。子どもが持って帰ってくるドリルを一緒に解いたり、していることが娘と同じ感じでした。 泣きながら(計算ドリルを)一緒にしていたというのを…そういう壮絶なところもあったし、家族がこういう風にかかわってくれてというのがあるから、今の私があるというのも伝えたいなとも思ってる。 同じ障害に苦しむ人の支えになれば…。自らの経験を本に込めようとしている北島さん。 そんな母親について、長女の菜々美さんは…。 長女 菜々美さん:行動力がすごくて、いろんなところに電話をかけて、『この制度ありますか?』みたいな。家でも勉強とかしていて、がんばっているところを見てきたから、本を出すって言った時はびっくりしたけど、応援したいです。 北島さんは持ち前の行動力を生かして、3年前に「かけはしプロジェクト」という会社を設立。 同じ障害があるお母さんの居場所づくりのため、月に一度、オンラインサークルを開いている。 この日は、子育てを始めたばかりの、0歳児のお母さんが初めてサークルに参加した。 0歳児の母:落ち込んだ時、『あっ、できない』とか、今までできていたことができないみたいなことが…発症したばかりなので、落ち込むことが結構あって、どうやって切り替えているのかなっていうのは聞きたい。 北島麻衣子さん:泣けるだけ泣きました。泣きたい時に、つらい時は泣く。落ちるだけ落ちて。私たちってどん底を経験しているじゃないですか。そこからは上がっていくだけなんで、そういうときは落ちるだけ落ちて、泣きたい時は泣く。ここだったら同じ経験をした先輩ママとか、今まさに同じ年齢の子どもを育てているママと、『あー、分かる分かる』とか、『そういう時はどうしてる?』とか気軽に聞けるじゃないですか。そういう場って絶対必要なんで。というか、私がほしかったので、当時。
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