【鹿児島・沖縄の糖業―迫られる変革】 有資格の季節工、馬毛島へ
種子島の新光糖業中種子工場は2023―24年期、11月29日から4月21日までの145日操業した。23年産サトウキビは収穫面積2330ヘクタール、生産量14万1千トン。農家の生産意欲は強く、面積は増加基調。機械化が進み、農家の規模拡大も進んでいる。 工場は従来から3交代。喜界島の生和糖業同様に集中自動制御室を整え、社員の多能工化にも取り組むなど「働き方改革」対応を進めてきた。 社員55人。浦島哲志管理部長によると、30年ほど前から徐々に減らし、最も少ない時は37、38人になったが、ここ数年増加傾向。「定年後の再雇用もあるが、季節工が集まらなくなった影響が大きい」 23―24年期の製造部門の季節工は必要数(25~26人)に届かぬ21人だった。種子島の西12キロの馬毛島で23年1月に始まった自衛隊基地整備の影響が大きかった。特に響いたのは原料投入のヤード作業。重機免許所持者10人に担ってもらっていたが、5人が馬毛島へ。工場内の社員と季節工に免許を取ってもらい、担当部署を兼務する形でしのいだ。 浦島管理部長は「残業規制は守られているが、一人ひとりの負担は大きくなった。注意はしているが、新人の指導教育に以前ほど手を掛けられなくなった。来期に向けては、もっと厳しくなると思う」。
基地整備の影響は原料輸送にも及び、運転手の馬毛島関連事業への転職で、撤退する運送事業者が出ているという。 馬毛島には、在日米軍空母艦載機の離着陸訓練用滑走路(2本)や港湾施設、火薬庫などが整備される。現在、滑走路用地の造成や管制塔の基礎工事、艦船係留施設の防波堤工事などが進められている。種子島では馬毛島基地勤務者用の隊員官舎200戸の整備が進んでいる。工事関係者は種子島と馬毛島の仮設宿舎などに寝泊まりして作業に従事している。 西之表市企画課馬毛島対策係は、九州防衛局の資料を基に「馬毛島だより」を随時作成し、市ホームページで公表している。最新の第42号(7月25日発行)によると、現在の工事関係者は種子島側約1840人、馬毛島側約1840人の計約3680人。 防衛省が当初示した工期は、おおむね4年。工事関係者のピークは今年2月の6000人との見通しだったが、約6割にとどまっている。滑走路の一部は先行して今秋の完成を目指すとしていたが、まだ造成段階で遅れるのは必至だ。 西之表市のハローワーク熊毛には馬毛島関係の求人多数。熊毛地区の有効求人倍率は県内で最も高い状態が続いている。製糖期と重なった昨年末から今年初めにかけては2倍超という異例の高水準となった。 種子島では、大阪・関西万博関連の施設整備が一段落したら、追加の工事関係者が大量に来島するのではないかという話が広がっている。馬毛島の工期は、人員不足もあって4年では終わらないだろうとの見方が大勢だという。 季節工の確保が難しくなるとしたら、社員を増やすのか。新光糖業の浦島管理部長は「キビの生産者やわれわれ製糖事業者に対する交付金財源の厳しさもあり、社員を増やすのは簡単ではない。馬毛島は5、6年したら落ち着くだろう。そうしたら現場の人たちはどう動くか。それも考えると…。難しい」。 ◇ 防衛省は10日、馬毛島の自衛隊施設整備事業が30年3月末の完成見込みになったと発表した。当初計画より3年遅れ。西之表市馬毛島対策係によると、同日来庁した防衛省職員から説明を受けた。遅れる理由は①波浪による資機材の搬入遅れ②能登半島地震の影響による資機材の不足③人員の不足―など。同市は、熊本防衛支局作成・提供の30年度末までの工事計画を市ホームページで公表している。