イタリア人の食卓に最も近いのは日本の居酒屋⁉
イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える企画です。
「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」などで知られるイタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさんが、日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。第1回はイタリアの食卓について。
イタリア人は「高級な料理」よりも「居心地がいい空間」を重視する
日本での生活が長くなって、今は何年目になっているかパッと答えられない。僕は食いしん坊が特徴のイタリア人だ。美味しそうなものを見ると、無意識に手を出して食べてしまう。きっと皆も同じだよね? イタリア人といえば、常に食べて楽しんでいるイメージだと思う。それは大正解だ! 僕のように、いくら長く日本に住んで日本人のように暮らしていても、自分の中に隠れているイタリア人が、食事タイムになると顔を出す。お喋りが止まらなくなり、テンションがどんどん上がって、終いには「うるさい!」と怒られるのがオチだ。日本人から見ると迷惑な話に聞こえがちだけど、実は違うということを知ってもらいたい。 イタリアの食文化っていうのは、本当のことを言うと、ただ食べることじゃないんだ。もちろん、生きるために食べないといけないけど、食べること以上に「コミュニケーション」が重要なんだ! イタリア人から食事中のコミュニケーションを奪うと、まるで宇宙人になってしまったかのように、生きていく仕組みがズレてしまう。 その理由は、イタリアの食卓では、誰もが自由で平等になって、陽気と笑顔を分かち合うという文化があるから。一緒に食卓を囲むことで、会話や親交を楽しむためのきっかけになるんだ。イタリア人にとって食卓での会話が「最強のパワー」であり、人々の元気の源になるんだ。
だから、イタリアの食卓は、家族や友人との絆を築く場にもなるのよ。日本では考えられないと思うけど、食卓では誰もが平等になるうえに、上下関係や社会的な決まりがないフラットな世界が広がる。イタリアに高級なレストランよりカジュアルな食堂が多い理由は、まさしくこれだ。食事の内容は会話の二の次だから、「高級な料理」よりも「居心地がいい空間」を重視する。 イタリア人が作り出す「居心地がいい空間」に、ぜひ日本人も入ってほしいな。きっと、一瞬でイタリア人に変身しちゃう気がする! この空間に出てくる料理は、まるでマンマの味のようで、日本人も気に入ってくれるだろう。 ふと最近感じることがある。日本でも、イタリア食文化のセンスを感じられる場所があるんじゃないかなって。どこだと思う? それは、居酒屋だ! 入るだけで、自分らしさを出せて社会的な決まりを考えずに楽しめる。料理に関係なく相手といるだけで、世界一楽しい時間になるよね。