《大統領選後を予測する》もしハリス氏が勝利したら…女性・マイノリティーに配慮、金持ちは増税し値上げ企業監視
■ マイノリティーに配慮、「法の支配」厳格に ハリス氏の父はジャマイカ生まれ、母はインド生まれで、ハリス氏は自らを黒人と認識しています。それだけに、マイノリティー(社会的少数派)に配慮した政策を掲げているのも特徴です。 LGBTQなど性的少数者への支援は長年取り組んできたテーマです。政府の補助金支給などにより、雇用や教育、スポーツ、住居、医療保険といった面で性的少数者が差別されることのないように施策を進めると公表しています。また、生まれ持った身体の性と本人の自覚する性が一致しない人が性を転換する場合、その医療への保険適用も検討しています。 ハリス氏がこのように人権擁護に積極的なのは、検事という法を執行する職業に携わっていた経験があるからでしょう。民主主義の基本原則である「法の支配」の確立には人一倍熱心です。 共和党のトランプ氏は、大統領権限を強化して法執行機関への介入も辞さない姿勢を取っていますが、ハリス氏は司法省の独立性を尊重し、その捜査や起訴に政権が介入してはならないとの姿勢を明確にしています。 ハリス氏は「2020年の大統領選では自らの敗北を認めず、結果を覆そうとした」としてトランプ氏を強く批判する一方、自らはどんな結果になっても有権者の判断を受け入れるとしています。
■ 金持ちには増税、法人税率引き上げなど企業に厳しく ハリス氏は、自分は経済的な「中間層」の一員であるとし、その拡大を訴え続けました。「中間層が強くなれば、アメリカが強くなる」と繰り返し、経済政策をめぐってトランプ氏と激しい論争を続けています。 ハリス氏の目玉は税制改革。高所得者には増税し、中・低所得者に対しては減税するというのが基本姿勢です。例えば、年収40万ドル(約6000万円)以上の高所得者には給与税(源泉徴収)を適用する一方、それを下回る人には増税をしないと宣言しています。子供が生まれたり、新しく家を買ったりした家庭には支援を厚くしますが、その財源は法人税率引き上げや金融所得課税の強化で賄う考えです。 米社会を覆うインフレへの対応については、どう考えているのでしょうか。 ハリス氏が問題視しているのは便乗値上げです。その政策では、生活必需品の不当な値上げを禁止し、政府機関「連邦取引委員会」を通じて違反業者に厳しい罰則を科します。さらに、肉類の流通監視に予算を増額し、関連する企業の合併にも目を光らせるといいます。 バイデン政権が2022年に制定したインフレ抑制法は、上院で可否同数となり、議長のハリス氏が賛成票を投じて可決されました。財政赤字を削減する一方で、再生エネルギーの普及や電気自動車(EV)の導入促進に力を入れる内容となっており、ハリス氏も継承する考えです。 2021年に超党派の賛成で成立したインフラ投資雇用法は、道路建設などの公共事業を通して雇用創出を図る内容で、ハリス氏も推進を主張しています。これには太陽光発電設備の建設などクリーンエネルギーの技術開発が含まれます。経済政策に環境対策を織り込むあたりに、ハリス氏や民主党らしさが出ています。 中間層拡大に向けた政策では、医療費支援も見逃せません。ハリス氏は2010年に成立した医療保険制度改革法(オバマ・ケア)の拡充を訴えており、薬価の引き下げや長期在宅医療へのメディケア(公的医療保険)適用などを提唱しています。もっとも、オバマ・ケアに対しては「財政が悪化する」として共和党が強硬な反対を続けており、大統領選後も民主・共和両党対立の火種になりそうです。