東洋大で日本一、FW村上力己が決意の最終学年へ…震災で亡くした父や家族のためにも「プロになって恩返ししたい」
[12.28 インカレ決勝 東洋大1-0新潟医療福祉大 栃木県グリーンスタジアム] 【写真】「美しすぎ」「めっちゃ可愛い」柴崎岳の妻・真野恵里菜さんがプライベートショット披露 東洋大に初優勝をもたらす決勝弾は、PKから生まれた得点だった。前半39分、DFと入れ替わるようにしてエリア内に侵入したFW村上力己(3年=尚志高)がGKと交錯。獲得したPKをMF新井悠太(4年=前橋育英高/東京V内定)が決めた。 主審の判定が出た瞬間、小さくガッツポーズを作った村上だが、ボールに向かうことはしなかった。「練習で外していたので…」とはにかみながらキッカーに名乗り出なかった理由を明かすと、「悠太くんが絶対に決めてくれると思ったので、託して蹴ってもらいました」と頼れる先輩に頭を下げた。 今季はシーズン前半に3得点を決めるなど、結果を残していた村上だが、夏の中断期間に行った横浜FCとの練習試合で左足ハムストリングを負傷。離脱期間も長引いてしまい、リーグ最終節の国士舘大戦に途中出場して復帰したが、インカレでは再びメンバー外となる日々が続いた。 しかしグループリーグの戦いでFWPonce 尾森世知(4年=柏U-18)が負傷したこともあって、ノックアウトステージから先発のチャンスが訪れた。準々決勝の大阪体育大戦は「久々の公式戦でやってやろうという気持ちが強すぎた」と空回りしたが、準決勝、そして決勝と前線からボールを追う動きで、優勝に貢献した。 怪我をした時には、尚志高時代の同級生であるDFチェイス・アンリ(シュツットガルト)から「何してんだよ」という連絡がきたという。チャンピオンズリーグのピッチに立った姿など、今は映像でしか確認できない存在になってしまったが、青春を共にした仲間であることに変わりはない。「高校のころと比べても段違いに成長したし、差をつけられているけど、追いつきたいと思わせてくれる存在です」。 岩手県の陸前高田市出身で、小学1年生の時に東日本大震災で被災した。地元で日本酒の製造・販売を行っている酔仙酒造で役員を務めていた父親の芳郎さん(享年49)を津波被害で亡くした。震災当日、村上少年は学校からすぐに高台に避難したというが、芳郎さんは家族の安否を確認しにJR陸前高田駅前にあった自宅に立ち寄ってしまったのだという。 3兄弟の末っ子で、2人の兄の影響でサッカーを始めた。「将来、ベガルタ仙台の選手にさせるんだ」。芳郎さんの口癖だったと聞かされた。「家族は中学校も地元を離れて盛岡に行かせてもらって、高校も寮生活と自分のやりたいことをやらせてくれている。そこはプロになって恩返ししたい。べガルタに入りたい思いはあるけど、まずはプロになってお母さんや兄弟に感謝したい思いが強いです」。 来季はいよいよ大学最終学年。当然、卒業後の進路を意識したシーズンになる。「もう最終学年なので、プロを目指すにも得点という結果で、数字で見せつけていきたいなと思います」。来年は東洋のエースとして、インカレ連覇を目指すチームを牽引する。