離婚後、50代で地方移住した女性漫画家の今。「老後のお金や人づき合いの悩みは減った」
石川県で暮らす漫画家・イラストレーターのなとみみわさん。義母の介護を経て49歳で離婚後、53歳になった昨年の3月に故郷の能登町にUターン移住しました。地元の新聞での連載や講演会など、漫画家としての活躍の幅を広げながら、今年9月には念願だったキッチンカーを開業。キッチンカーでの営業を始めて出会った人々や、参加したボランティアでのエピソードについてご紹介します。 【マンガ】『老後のお金が不安です!』1話を試し読み
デビュー戦は能登で。今はボランティア帰りのお客さんも
――現在、キッチンカーは金沢市内をメインに営業されているんですよね? なとみみわさん(以下、なとみ):初めて営業したのは、故郷・能都町でした。5個、10個…と買ってくれるお客さんが多くて、デビュー戦から大盛況で、不慣れだからてんてこまい(笑)。現在は金沢市内を中心に出店して、週末は、復興支援のイベントなどに参加しています。 能登豚を使用した豚丼を提供しているからか、能登のボランティアに参加したという方が話しかけてくれることも多くて。県内に、ボランティアの方の宿泊拠点となる「ベースキャンプ」が設置されているのですが、先日は、そこに1週間ほど滞在したという学生さんが声をかけてくれました。きれいで、設備も整っていると評判みたいです。 高齢の被災者のお宅の泥かき(浸水した家屋などから水や泥を取り除く作業)ボランティアのエピソードを話してくれた人もいました。「もうここには住んでられん」って心が折れていた家主のおじいさんが、みんなで片づけて、ちょっとずつ床が見えてきたときに「こんなにきれいにしてもらったんだから、もう1回がんばるしかないな」って、少し元気になっていたそうなんです。そういう瞬間に立ち会えるのがなによりの感動だって。
炊き出し、泥かき…ボランティア活動にも参加
――なとみさんご自身もボランティアに参加されているんですよね? なとみ:珠洲市の炊き出しにキッチンカーで参加しました。仮設住宅の皆さんが「大きな家族」のように明るく暮らしていて、私が能登弁でしゃべると、「○○(地名)出身なの?」と打ち解けてくれたのがうれしかったです。復興支援で訪れた演歌歌手の方の着物がきれいだったとか、他愛ない世間話ばかりなんですけどね(笑)。 ただ、炊き出しで訪れた地域は水道も通っていたのですが、同じ能登半島でも復旧の度合いはさまざまです。まだ道路がボコボコのままで、冬になっても除雪車が入れないんじゃないかと心配になるような場所もありました。その地域には、土砂崩れで埋まった側溝や畑から泥をかき出すボランティアでうかがったのですが、これから寒さが本格的になるのが気がかりです。 ――訪れた先で印象に残っていることはありますか? なとみ:珠洲市の倉庫の泥かきボランティアで会った、県外からの参加者の男性が、以前訪ねたボランティア先のおじいさんが忘れられなくて、珠洲に来ているという話に感動しました。もうどこのお宅だったのかもわからないそうなのですが、何度も頭を下げていた姿が印象に残っていて「あのお父さん、今どうしてるのかな」と、つい足を運んでしまうみたい。 ――ボランティアに興味はあるけど、一歩踏み出せないという人も多いですが、なにかアドバイスはありますか? なとみ:行きたくて行ってはいますが、私は非力だし、現場じゃ役立たず(笑)。でもみんなで体を動かす作業にはやりがいを感じています。なので興味がある人は、まず一度参加してみるのがいいんじゃないでしょうか。もし、自分には合わないと感じても、ほかの支援方法もいくらでもあるわけですから。