弟ばかりに愛情を注いできた「毒親」から介護要請。周りはみんな“実家に戻るべき”と言うけれど……
高齢化が進む日本において「介護」は大きな社会テーマのひとつ。そこには、お金や人間関係などさまざまな問題が横たわっているようです。 【困った】半ば絶縁状態の“毒親”から突然の介護要請が…… 本稿では介護に悩む人のエピソードを紹介しながら、介護アドバイザーの横井孝治が注意点などを解説します。
◆今までさんざんな扱いをしてきたのに?
「これまで自分に無関心だったどころか、仕送りをしても感謝のひと言すらなかった母から、『実家に戻って介護するのが当然』と言われても。どんな事情があっても、家族を優先するべきなんでしょうか」 今回、介護の悩みを打ち明けてくれたのはタツノリさん(50代男性)。子どものころから1つ年下の弟と比較され、両親からは差別的に扱われてきたといいます。 「本当は僕も大学に行きたかったんですけど、親に『弟の学費が優先だから、高校を出たら働いて、家に金を入れろ』と却下されちゃって。 結局、高校卒業後は地元の企業に就職しました。ただ、両親や弟と顔を合わせるのは嫌だったので、実家から少し離れたところで一人暮らしをしましたけど」 それからタツノリさんは、毎月5万円、ボーナス時は追加で10万円を仕送りし続けている。結婚して生活が変わっても、仕送り額は変えなかった。 なるべく家族との接触を避ける生活が続き、親や弟とは、数年前に亡くなった妻の葬儀で会ったくらいだったそう。 そんな中、突然1本の電話がかかってきました。 「お父さんが脳出血で入院したの。退院した後も体にまひが残るらしくて。弟にはほら、家族があるじゃない? 家も遠いし。だからタツノリ、長男のあなたが実家に戻ってきなさい」 「えっ、無理だよ今さら」 今まで弟のことばかり優先してきて、家にお金を入れても何も言ってくれない、半ば絶縁状態の母から「実家に戻って介護をするのが当然」と言われてイラついたタツノリさんは、介護要請を断りました。 しかし、怒り狂った母から電話の嵐。 「これからお父さんにもお金がかかるのよ。もっとお金を入れてよ」「あなたが実家で暮らせば、家賃分は追加で入れられるじゃない」「お父さんの介護も、女の私より男のあなたのほうができるでしょ」 弟からは「兄さんは独り身だから身軽でしょ? 親と和解するチャンスだし、ほら」と言われ、主治医からも「子どもとして親を支えるのは当然。実家に帰ってあげなさい」と同居介護を勧められてしまいます。 「正直、あんな家には帰りたくありません。今までさんざんな扱いをしてきたのに、素直に戻ってこい、なんて無理ですよ。ただ、気がかりもあって。主治医の言葉を無視し続けてもいいのかなって。困っています」