窪田正孝の瞳に吸い込まれそう…同じくらい生徒役で頭角を現したのは? NHKドラマ『宙わたる教室』第2話考察
「逃げ出す口実にしていませんか?」
アンジェラは、黒田から疑いをかけられたマリを気にかけていた。同じく日本とフィリピンのミックスだからということもあっただろうが、マリのいろんな事情で日本に来た子どもたちを助けられる教師になりたいという夢を応援していたから。アンジェラもまた、母親のオーバーステイにより隠れて暮らしていたところを、近所の小学校の先生に助けられ、彼女のようになりたいと思い続けていた。 暴力は断固否定で人の夢を応援できるやさしいアンジェラ。しかし、彼女が黒田に怪我を負わせたとして大きな問題に発展してしまう。アンジェラから話を聞いても、どうにも納得がいかない藤竹。「結論が乱暴すぎる」という言い回しが、なんとも藤竹らしい。 アンジェラの欠席が続いて数日。藤竹がマリに、アンジェラが退学になってしまうかもしれないことを告げると、マリは黒田との間に起きた出来事を話しはじめた。 実はあの日、マリの前に再び現れた黒田は、話の流れからマリのペンケースを馬鹿にし、拾い上げようとしたマリの前でそれを蹴り飛ばした。高校入学のお祝いにと、妹がプレゼントしてくれた大事なペンケースだったとは知らずに。怒りに震えたマリは、ペンケースから散らばったカッターを握り、黒田のほうへ歩み寄る。アンジェラは、マリから黒田を、そしてマリ自身を守るために、身を挺したのだった。 勉強にもついていけないし、自分の夢よりマリの夢、というアンジェラに対して、「逃げ出す口実にしていませんか?」と藤竹。痛いところをついてくる。そのうえで、「夢に優劣なんかない」とアンジェラに伝える。生徒のことをよく観察し、熱を帯びすぎることなくフラットに対応する。まっすぐ見てしまったら吸い込まれそうな窪田正孝の瞳が、藤竹としてこちらの心を掴んでくる。 しかし、真犯人が見つからない以上、アンジェラの退学は避けられそうもない。
岳人(小林虎之介)の行動で犯人が明らかに
本来ならここで主人公が活躍するのが相場だろう。だが、動いたのは岳人だった。昼間の学校に乗り込み、校庭で「おーい、犯人」と大声で呼びかけて見せた。岳人はきっと、偏見によって受ける差別の悔しさや辛さ、諦めを知っている。まさにそれに直面しているアンジェラを放っておけなかったんだろう。岳人の様子を見ていた藤竹が、微笑んでいたのが印象的だった。 結局、岳人の行動によりペンケースを盗んだ犯人が明らかになり、アンジェラの退学はなくなった。学校生活が続くことで迷惑をかけてしまうと謝ると、アンジェラの娘は「JKを楽しんで」と背中を押す。諦めたものを取り戻すためのギアが、もう一度しっかり踏まれたはずだ。 藤竹も、アンジェラが戻って来たことを「クラスの大気が安定する」と喜ぶ。その場の空気を温める力が彼女にはあるのだ。失敗続きだった藤竹と岳人の噴火実験も、彼女の一言がきっかけとなってついに成功。知識はあるのに体系立っていない、という藤竹の言う通りだった。そしてきっと、こういうことから人は勉強に興味を持つのだろう。 実験成功により、瓶から勢いよく噴き出す泡。それを見た岳人は子どもみたいに純粋に、無邪気に喜んでいた。読み書きが苦手だからと投げ出してしまった学生生活を、いままさに岳人は謳歌しているのだ。数秒間の笑顔から、岳人の奥行きを感じて温かい気持ちになった。誰にも奪えないし邪魔できない、かけがえのない時間。一人ひとりの生徒としっかり向き合う藤竹のもとに、次はどんな生徒がやってくるのか楽しみだ。 【著者プロフィール:あまのさき】 アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
あまのさき