なぜサイバーエージェントはJ2町田の経営権を取得したのか?
インターネット広告事業やメディア事業を手掛けるIT大手、株式会社サイバーエージェント(本社・東京都渋谷区)が、J2のFC町田ゼルビアの経営権を取得することが決まった。 ゼルビアを運営する株式会社ゼルビアが第三者割当増資にて発行する2万2960株を、総額11億4800万円を出資して引き受けることを決議。全株式の80%を保有する筆頭株主となった。 株式会社ゼルビアの下川浩之代表取締役会長(57)、大友健寿取締役社長(41)とともに、1日に東京都内で行われた記者会見に臨んだサイバーエージェントの藤田晋代表取締役社長(45)は「東京・町田から世界へと通じる、ビッグクラブへの成長をサポートしていきたい」と長期的視野に立った抱負を語った。 先月下旬に発表された来シーズンのJリーグクラブライセンスで、ゼルビアはJ1ではなくJ2のそれを交付されている。現在は3位につけるなど、自動昇格圏の2位以内をうかがいながらもJ1には昇格できないゼルビアと、グループの連結売上高約3700億円、同営業利益約300億円を誇るサイバーエージェントを結びつけたのは何なのか。 ここで注目されるのが、1998年に設立されたサイバーエージェントとJリーグの接点となる。2005年から東京ヴェルディとユニフォームスポンサー契約を結んだサイバーエージェントは、翌2006年4月に運営会社の株式会社日本テレビフットボールクラブ(当時)と資本・業務提携を結ぶ。 ヴェルディの発行済株式総数の48.1%を取得。筆頭株主の日本テレビ放送網に次ぐ大株主となり、自身は副社長を務めながら、2008年1月に撤退した理由を藤田社長はこう説明する。 「東京ヴェルディでは筆頭株主ではありませんでしたので、なかなか思うような経営ができませんでした。加えて、(当時の)企業規模的にも支えきれないと限界を感じて断念しました」 その後の成長ぶりは、あらためて説明するまでもないだろう。著名人ブログの『アメーバブログ』やインターネットテレビ局の『AbemaTV』など、時代の変化に対してタイムリーに対応するソーシャルメディアサービスを次々に提供。グループ会社を介してゲーム事業にも参入した。 たとえばスマートフォン向けのソーシャルゲーム『グランブルーファンタジー』を開発したことで知られる、子会社の株式会社CygamesはJ1のサガン鳥栖に続いてセリエAの名門ユベントスもスポンサード。一度は距離を置いたものの、藤田社長は間接的にサッカー界の動向を注視し続けた。