家族を振り回した父が火事で死去、遺された絵画と向き合う息子の複雑な胸中…宮崎あおい「客観的に向き合った」
母は孤独死、弟は20歳で命を絶つ
女優の宮崎あおいが、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当するのは、17日・24日・12月1日の3週にわたり放送される『炎の中で死んだ父を僕は知らない』。自分の人生を翻ろうし続けた父の足跡をたどるテレビディレクターを追った作品だ。 【写真】亡き父のアトリエに遺された大量の絵画 今回の物語に「客観的に向き合った」という宮崎。彼の複雑すぎる心境やその父の姿を想像しながら、声を吹き込んだ――。 (注)…宮崎の「崎」は正しくは「立つ崎」
■どんな人物で、どんな画家だったのか、なぜ家族を壊してしまったのか 今年4月、76歳の画家・落合皎児(こうじ)さんが火事により突然この世を去った。80年代、バルセロナで活動した皎児さんは、ピカソやミロといった巨匠と並ぶ「スペインの画家150人」に選出されたほどの才能を持ち、称賛されていた人物だ。 一方で、酒浸りで変わり者の性格から、幸せな家庭を築くにはほど遠く、帰国後に離婚。その存在に悩まされ続けた家族は心を病み、妻は孤独死、次男は20歳で命を絶った。こうして家族を振り回した父に、複雑な思いを抱え生きてきたのが、長男のテレビディレクター・落合陽介ギフレさん(44)だ。 全焼した住居の隣にあるアトリエに遺されたのは、1,000点におよぶ大量の絵画と約1,500万円の借金。もし、父の絵画を相続するなら借金も相続することになる。日本では輝きを失っていた父の作品は、“ゴミくず”なのか、それとも世界が求める“宝”なのか…。 思えば、12歳で実家を飛び出して別々に暮らした陽介ギフレさんは、父のことをよく知らない。どんな人物で、どんな画家だったのか、なぜ家族を壊してしまったのか……一人残された息子が亡き父の人生を知るための長い旅に出る。
■ゲーム芸人フジタとの違い「もう知ることができない」 今回で『ザ・ノンフィクション』のナレーションを、歴代最多の46回担当することになる宮崎。そんな彼女が、「今までで一番、客観的に向き合った気がします。そのくらい、気持ちを理解するのが難しい部分が多かったです」と吐露するのが、番組29年の歴史で初めて3週連続で描かれる今回の物語だ。 ギフレさんは父の絵について、「自分の家庭がめちゃくちゃになった象徴みたいなもの」「どんだけしんどい思いをしてきたか」と苦しい思いを打ち明ける一方で、「簡単に断ち切れない」「通過儀礼として“さよなら”を言いたい」とも語っている。 そんな一見相反する彼の言動に、宮崎は「お父さんのことを尊敬している感じもするし、その絵に“これすごいですよね!”と言っている時の顔は本当にそう思っているように見えますが、この絵のせいで…と思っている気持ちも持っているんですよね」と、複雑な胸中を想像。 宮崎と言えば、『ザ・ノンフィクション』で、かつて自分を捨てた父に恨みを持って生きながら、認知症を患ったその父の世話をすることになったゲーム芸人・フジタの物語でもナレーションを担当しているが、「フジタさんはお父さんもしっかり映っていたから、父子それぞれの思いがちゃんと言葉で聞くことができたけれど、今回はギフレさんのフィルターを通してのお父さんだし、友人の方たちの思い出話もその人たちのフィルターを通したお父さんですよね。残された日記にいろいろ書かれてはいるものの、本当に思っていたことをもう知ることができないことが、より難解にしているんだなと思いました」と解釈した。