なぜU-22日本代表で久保&堂安は機能しなかったのか?
しばしの沈黙の後に、久保建英(RCDマジョルカ)は努めて前を向いた。シャドーから左サイドハーフにポジションを変えながら先発フル出場するも、U-22コロンビア代表に0-2の完敗。ショックと悔しさを交錯させた取材エリアで、黒星から得られた収穫を問われた直後だった。 「強いてよかった点をあげるとすれば、負けたことでみんなに危機感が生まれたこと。本番(のメンバー)に選ばれれば、ですけど『あのときに負けておいてよかった』と思えればいい」 エディオンスタジアム広島で17日に行われたキリンチャレンジカップ2019。現時点におけるベストメンバーと謳われた陣容のもと、開幕まで8ヶ月あまりに迫った東京五輪に臨むU-22日本代表が国内で初めてお披露目された一戦からは、残念ながら熱量の類が伝わってこなかった。 カタールワールドカップ出場を目指すフル代表に招集され続けてきた関係で、コロンビア戦がU-22代表におけるデビュー戦となった堂安律(PSVアイントホーフェン)は自らへの戒めも込めながら、ホームで屈辱を味わわされた原因を戦術以外の部分に求めた。 「日本における初めての試合で少なからずプレッシャーもあったと思うし、そういう部分も含めて何か消極的に見えた試合だった。球際で負けすぎているし、誰かが守ってくれるだろう、という感じに見えた。チーム全体として、ボールを受けるのを怖がっているシーンも多かったし、いろいろなポジションの選手が『もっとパスをくれよ!』と言ってもよかったんじゃないか、と」 キルギス代表とのカタールワールドカップ・アジア2次予選を戦った敵地ビシュケクから、強行スケジュールを押して広島入りした森保一監督は、不在中の指揮を託した横内昭展コーチとも相談したうえで、U-22代表が慣れ親しんできた[3-4-2-1]システムのもとで選手たちを送り出した。
注目されたシャドーには左に久保、右には堂安が、1トップの上田綺世(鹿島アントラーズ)の背後に左右対のかたちで並んだ。フル代表でも2試合、合計でわずか26分間しか共演していない2人のレフティーは、ヨーロッパ仕込みの個人技と縦への推進力を東京五輪世代にもたらした。 開始7分に久保が、その2分後には堂安が相手ペナルティーエリアに近いエリアで、個の力を生かした突破からファウルを獲得する。それぞれが放った直接フリーキックがゴールネットを揺らすことはなかったが、初めて先発で共演した俊英コンビは大きな期待を抱かせた。 しかし、時間の経過とともにゴールへの予感が萎んでいく。左右のウイングバック、菅大輝(北海道コンサドーレ札幌)と菅原由勢(AZアルクマール)がマイボールになっても高い位置を取れず、結果として前線は上田とシャドーの3人だけという状況が続いてしまった。 「見ている方々が思った通りに、僕たち自身が重たさを感じていた。たとえば僕にボールが入ったときに、パスを送る選択肢は(上田)アヤセやタケ(久保)しかなかった。正直に言うと、上手くいきそうな雰囲気が自分自身のなかになかった」 堂安が振り返ったように、前半の序盤で日本の出方を確認したコロンビアは、前線の3人に対して執拗にプレッシャーをかけて日本の攻撃を機能不全に陥れた。前半を戦ったピッチの上で、そしてハーフタイムのロッカールームで、選手たちで何度も打開策を話し合ったと久保も打ち明ける。 「ハーフタイムには、守備のときは5バック気味でもいいんですけど、攻撃のときにも5バック気味になるのはもったいないよね、という意見が出ていました。ウイングバックのせいにはせずに、彼らを押し上げるにはどうすればいいのかを考えなきゃいけない、と。広島との練習試合ではできていた場面も多かったので、いろいろな状況にもよりますけど、意識ひとつで変わるのかなと思っています」 有効な対策を見出だせないまま後半2分、14分に連続失点。直後にシステムを[4-2-3-1]にスイッチ。左から久保、堂安、途中出場の三好康児(ロイヤル・アントワープFC)が配された2列目が、左右のサイドバックのオーバーラップもあって、攻撃に厚みをもたらせ始めた。