アメリカ港湾、労使が暫定合意しストライキを回避。「雇用創出へ技術導入」
米国東岸港湾の労使交渉が暫定合意に達した。労働組合ILA(国際港湾労働者協会)と使用者団体USMX(米国海運連合)は8日、共同で「期間6年の基本協約(マスターコントラクト)の全項目について、暫定合意した」という声明を発表した。両者は「(現行協約の期限となる)15日のストライキ(work stoppage)は回避された」と明言した。正式合意までにはまだ時間がかかるが、大幅な混乱は避けられる見通しだ。 争点となる自動化・半自動化など、具体的な内容については明らかにされていない。しかし、共同声明では「この合意は、ILAの現在の雇用を保護し、より多くの雇用を生み出す技術を導入するための枠組みを確立するとともに、東岸・ガルフ港湾を近代化し、より安全で効率的な港にし、サプライチェーンを強固に保つために必要な能力を生み出す」と説明。何らかの技術導入に関する合意があったものとみられる。 米国東岸労使の基本協約は昨年9月末で期限切れを迎えた。期限内に協約更新に合意できなかったことで、ILAは10月1日から、実に47年ぶりとなる米国東岸・ガルフ港湾全域でのストライキを実施。その後、6年間で約61・5%増という大幅な賃金引き上げで合意したことでストは3日で終了。自動化を含む残る課題について協議することとなっていた。 労使交渉は今月7日再開したが、昨年12月には両者が自動化技術を巡って対立するコメントを出しており、短期間での妥結は難しいと思われていたが、水面下ですり合わせが行われていたようだ。 7日からの公式会合前の5日、労使による秘密会合が開催されたことが報じられている。同会合ではUSMXの幹部やニューヨーク・ニュージャージー港、ノーフォーク港のコンテナターミナル代表、ILA側はハロルド・ダゲット委員長とデニス・ダゲット副委員長が参加。この席で組合側は、半自動化荷役機器などの導入を受け入れる代わりに組合側の新規追加雇用を求めたようだ。また自動化されていない既存のRMG(レール式トランスファークレーン)1基について、組合員1人の雇用追加要求に加え、組合員の新規雇用の是非はILAの技術委員会の承認事項とする―ことなどを要求したと報じられている。 ILA組合員の平均給与は10万―15万ドルで、時給換算では20―41ドル。 5日の会合で要求された内容に基づき、今回の暫定合意が成立したかどうかはまだ明らかになっていない。 アジア―米国航路では昨年12月から、ストライキ発生を見越したと思われる前倒し出荷が加速。北米航路のスポット運賃は西岸・東岸向け共に上昇傾向にあった。それが今回の急転直下の合意により今後、どう影響していくのか注目される。
日本海事新聞社