bôaが語る復活劇とバンドの現在地、『serial experiments lain』主題歌の再発見
ニュー・アルバム『Whiplash』制作背景
ーでは、ニュー・アルバムの『Whiplash』について伺わせてください。スタジオに入るのは2ndアルバムの『Get There』以来、20年ぶりだったそうですが、新たなアルバムを制作する上で最も大きなモチヴェーションを置いていたのはどんなところだったのでしょうか。 ジャスミン:レコード会社が、「やってみたい?」といってくれたことがモチベーションを得るきっかけだった。そう言ってもらえて本当に良かったと思う」 ー今回の制作では、ジャック・アントノフやパッション・ピットの作品で知られるクリス・ゼインをプロデューサーとして迎えていますが、サウンド面で形にしたかったアイデアやヴィジョンとは? リー:20周年のアニバーサリーのために皆でジャムをやるために集まったんだよな? 「Duvet」の20周年記念で、ちょっとしたジャムをやったんだ。その時、「Duvet」から派生して、最終的には全然違う全く新しい曲みたいに聴こえるサウンドが生まれてね。それがすごく良かったんだ。 アレックス:僕たちは、とにかく曲が書きたかったんだと思う。どんなサウンドと特に決まっていたわけではなく、メンバー全員がやりたいと思うことを見つけ、それにしたがって何かを作りたかったんだ。過去に足を踏み入れるのは必然だとは思ったけど、必ずしも昔の作品を再現しようとしたわけじゃない。過去と繋がりながらも、3ピースとして僕たちのサウンドは少し変化したんだ。何か他のものへと発展したと思う。多少の違いがありつつ、確実に過去への頷きもある作品になったと思うね。 ーちなみにNYLON誌のインタビューでアレックスは、「ニューウェーヴやシンセの影響を受け、スージー・アンド・ザ・バンシーズを思い起こさせるような瞬間もある"ヘヴィ・ロック”」とコメントしていましたね。その意味するところ、またサウンド面で刺激やインスピレーションをもらったアーティストがいたら教えてください。作曲やレコーディング中によく聞いていたものとか。 アレックス:僕はジョニー・マーのギターをたくさん聴いていた。あと、スージー・アンド・ザ・バンシーズも。彼らにはヘヴィ・ロックのライティングの面で影響を受けている。僕らは、時々ボリュームをあげてヘヴィーなサウンドを演奏するのが好きなんだ。そうやって、サウンドスケープに変化をもたらすためにね。できるだけ幅広いものにしたいから。 ー今作の背景にあるストーリーやテーマ、リリックのインスピレーションとなったものについて教えてください。 ジャスミン:正直、多分それは失恋だと思う。その経験を通して自分のアイデンティティを再確認し、再調整し、物事を理解しようという姿勢に戻り、前に進もうとすること。テーマはそんな感じかな。 ー今作の中にはすでにライヴで披露されている曲もありますが、中でもリアクションの大きなもの、あるいは今の自分やバンドのフィーリングを表していると思う曲は? ジャスミン:それを選ぶのはすごく難しい。一つの作品に、甘い、悲しい、ソフト、ヘヴィー、そして怒りといったさまざまな感情が詰まっているから。でも、ステージで演奏していてすごく楽しいのは「Walk With Me」かな。あの曲にはすごく良いグルーヴがあると思う。二人はどう? アレックス:曲全てがそれぞれに小さな役割を果たしているんだ。でも確かに、「Walk With Me」と「Whiplash」と「Strange Few」の3曲はライブで演奏していて楽しい。「Frozen」はまだライブでやったことがないんだけれど、あの曲も演奏していて楽しめるんじゃないかな。 リー:アレックスが言った通り、全ての曲それぞれが異なる性格をしている。自分のお気にりの子供を選べないのと同じで、曲全てが、皆それぞれに美しいんだ。 ー今作までのこの20年近くの間、みなさんはそれぞれの生活を送りながら音楽に携わってこられたわけですが、その中でも日本のファンとしては、2012年に、東日本大震災の支援のために立ち上げられたチャリティー活動が特に印象に残っています。その経緯や動機など、当時の話を改めて教えていただけますか。 ジャスミン:私は半分日本人だったから、もちろん日本のことが心配だったの。私が聞いていたところでは、多くの人々が支援を得られていないという話だった。だから、より多くの人々に援助が届く方法があるかもしれないと思っていろいろなチャリティー団体を調べてみたの。そして、自分たちでもちょっとした募金活動とか支援するために何かできないかと思ってチャリティー活動をすることに決めた。あれ以外何ができるか思いつかなかったのよね。でも、結果的に大した額ではなかったけれど寄付をすることはできた。控えめではあったけれど、とにかく何かがしたかったの」 ー最後に、今後の展望について教えてください。これからbôaのついてはどんな未来図を描いていますか。 ジャスミン:まずはこのツアーを無事終えること。そしてこれからも多くのツアーをこなし、いろいろな国で様々な人たちの前でパフォーマンスをして日本にも行きたい。そして、ツアーで訪れた国でいろいろな食べ物を発見したい(笑)。 リー:良いレストランを見つけて、ファンに会って、自分たちも楽しめるツアーを続けたい」 アレックス:そうだな。 ー今日はありがとうございました。 アレックス:日本にも早くいけますように。 ジャスミン:ありがとう。 リー:ありがとう。良い一日を。
Junnosuke Amai