ほぼ全裸の選挙ポスターは表現の自由か 警視庁が警告 専門家「適切な表現考えるべき」
東京都知事選(7月7日投開票)で、ほぼ全裸状態の女性を使用したポスターが波紋を呼んでいる。作成した候補者は「表現の自由を訴えるため」としているが、相次ぐ批判に警視庁が告示日当日の20日、都迷惑防止条例違反の疑いで警告。候補者はポスターをはがすことに同意した。都選管は今回のポスターについて「公職選挙法に抵触していない」との見解で、選挙と表現の自由を巡る論争は今後も続きそうだ。 【写真】都庁前に設置された東京都知事選の選挙掲示板(一部画像処理しています) ■想定外の選挙運動 「子供に見せられない」。都知事選の選挙掲示板のポスターを見た都内に住む40代の男性会社員は憤った。問題視されたポスターには、胸や下半身の一部を隠したほぼ全裸の女性があしらわれた。書かれている内容も「売春合法化」「表現の自由への規制はやめろ。モザイク解禁」など数パターンある。 都選管の担当者は、「告示日に都民から多くのお叱りをいただいた」という。一方、表現の自由を尊重する公選法には抵触していないとの判断で、「選管として勝手にはがすなどの措置はできない」と警視庁に相談。今回、警視庁がすぐに対応したため、候補者は警告を受けた20日夜以降、問題のポスターの撤去を進めた。 ■想定外の運動に困惑 選挙と表現の自由を巡っては、4月の衆院東京15区補欠選挙で他陣営を妨害したなどとして代表らが逮捕された政治団体「つばさの党」の事件でも注目された。都選管は、今回のポスターも含め「想定外の選挙運動が出てきている。今後の選挙がどうなるのか」と困惑を隠せない。産経新聞の取材に問題の候補者は、「法の範囲内で作成したつもりだが、警視庁がルールを示した以上従う」とした。 ■有権者は意思表示を 拓殖大政経学部の岡田陽介准教授は「どの候補にも主張はあると思うが、世の中に与える影響を考えなければならない。掲示板は小学校の近くなどに設置されることが多く、子供への影響や適切な表現かは考えるべきだった」と指摘。多様な選挙手法が出てくる中、公選法の厳格化は法の隙間を狙ういたちごっこを生みかねず現実的ではないとして、「多くの有権者が違和感を覚える手法もある。望まない選挙運動に対し、有権者が意見表明をすることで、より良い選挙につながる」としている。