「早く起きて、飯を作れ」風邪で寝込む妻に、家事を強制する夫…離婚事由になる?
「私が風邪で寝込んでいるのに、いつも通りの家事を強制させられました。離婚事由になりますか」。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。 相談者の女性(40代)は普段、朝食をつくったり、子どもの学校へ送迎をしたりしています。ある日、風邪をひいて寝込んでいるのにもかかわらず、夫から「早く起きて、飯を作れ」と言われたそうです。 相談者は、体調不良をおして子どものために普段通りの家事を行いました。相談者は、この一件を通して夫に不信感を抱き、離婚したいと考えています。話し合いで決着がつかなかった場合、裁判で離婚は認められることになるのでしょうか。宮地紘子弁護士に聞きました。
●長期間にわたって何度も繰り返されたらモラハラに該当
――病気の相談者に家事等を強要したことは、モラハラなど離婚事由になりますか モラルハラスメント(モラハラ)とは、肉体的な暴力を伴わない、精神的な嫌がらせやいじめのことです。主に、言葉や態度などの言動によって行われます。例えば、執拗に叱責する行為や相手の人格を否定するような態度をとることなどが挙げられます。 今回のケースでは、病気の相談者に家事等を強要したということです。 同じようなことが長期間に渡って何度も繰り返される場合には、精神的な嫌がらせ(モラハラ)に該当し、離婚事由になり得ます。
●夫に対し慰謝料を請求したらどうなる?
――離婚することになったとして、夫に対する慰謝料請求は認められるのでしょうか 慰謝料とは、個々の暴行、虐待、不貞行為などによる精神的苦痛や離婚そのものによって生じる精神的苦痛を償うための損害賠償金をいいます。 今回、妻は夫の言動により精神的苦痛を被っており、裁判上、これが離婚原因と認められた場合には慰謝料を受け取ることができます。 ――今回のケースのように、不貞や暴力などが原因ではない不仲の場合、離婚を成立させるためには、どのような方法があるのでしょうか 当事者が離婚に合意をしていれば離婚することができ、合意が得られない場合であっても、法定離婚事由(民法770条1項各号)に該当する場合には、裁判による離婚が認められます。 DVがあった場合や、既に別居が始まっており長期に及んでいる場合には客観的に婚姻関係が破綻していると認められ、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当し、離婚が認められることになります。 【取材協力弁護士】 宮地 紘子(みやち ひろこ)弁護士 八事総合法律事務所 名古屋市出身。勤務弁護士を経て独立後は離婚や相続などの家事事件を中心とした案件を数多く担当。JAPAN MENSA会員。家庭では1児の母。子育てと仕事の両立に日々奮闘中。