『エイリアン:ロムルス』ザ・ガール・ロスト・イン・スペース
『エイリアン:ロムルス』あらすじ
人生の行き場を失った6人の若者たちが、生きる希望を求めて足を踏み入れた宇宙ステーション“ロムルス”。だが、そこで彼らを待っていたのは、恐怖と言う名の絶望──寄生した人間の胸を突き破り、異常な速さで進化する“エイリアン”だった。しかも、その血液はすべての物質を溶かすほどの酸性のため、攻撃は不可能。宇宙最強にして最恐の生命体から、彼らは逃げ切れるのか?
夢の後の夢、悲鳴の後の悲鳴
「人はみな独りぽっちで生きている―――夢を見る時に独りぽっちなのと同じように…」(ジョゼフ・コンラッド「闇の奥」)* リドリー・スコット監督による『エイリアン』(79)の撮影台本には、ジョゼフ・コンラッドの小説「闇の奥」のエピグラフが記されていたことが知られている。死体を運ぶ宇宙船。『エイリアン:ロムルス』(24)のファーストシーンには、広大な宇宙に漂うノストロモ号が映り込んでいる。シリーズ第一作でエレン・リプリー(シガニー・ウィーバー)たちが乗っていた、あの多くの惨劇が起こった宇宙船だ。ボロボロになったノストロモ号は幽霊船のごとく、この宇宙を彷徨い続けている。本作にはリプリーが57年間の眠りに入っている間の出来事が描かれている。言い換えるならば、リプリーが夢の中にいる間の出来事でもある。 リドリー・スコットは『エイリアン』の冒頭で宇宙船内の設備を描写していた。船内の廊下、ダクト、トンネル、レトロ・フューチャーな機器。オーディエンスを夢の中へ、さらにその奥へと誘うような、ゆっくりとしたカメラワーク。カメラと共に無時間の中を漂うような感覚。フェティッシュに撮られていく宇宙船の内装には、バロック建築のような彫刻性すら感じることができた。しかしこの夢はやがて取り返しがつかないものになっていく。誰にも聞こえない悲鳴が響き渡る船内。惨劇の起きた宇宙船は、やがて廃墟になっていくだろう。 フェデ・アルバレス監督はここから物語を始める。『エイリアン:ロムルス』における廃墟のような、あるいは洞窟のような宇宙船内のセットは、夢の後の夢、悲鳴の後の悲鳴から始まったデザインといえる。主人公のレイン(ケイリー・スピーニー)は、太陽の光をまだ知らない。ウェイランド・ユタニ社によって労働者たちが搾取されているジャクソン星には太陽の光が届かないのだ。