●いじめの「重大事態」は事実確認ができなくても認定される?
本件について
さて、本件について見てみましょう。本件では、 Bさんが「Aさんが睨んだ」と訴えていますが、事実確認ができていません。ここでよくある誤りが、事実確認ができない以上「いじめにより……相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている」訳ではないと判断することです。 しかし、「児童生徒や保護者から、いじめにより重大な被害が生じたという申立てがあったときは、その時点で学校が『いじめの結果ではない』あるいは『重大事態とはいえない』と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たる。」とされています。 本件では、年間30日以上の欠席があり、これがいじめにより生じたと保護者からの訴えがある以上、「Aさんが睨んだ」という事実が学校として確認できなかったとしても、学校又は学校の設置者(教育委員会等)としては、やはり「重大事態」として扱うことが求められる事案です。 現場で子どもたちと向き合う際に、常に法律を意識するのはなかなか難しいかもしれませんが、重大事態に当たるかどうかの基準や、重大事態の類型によってガイドラインに基づき行うべき対応が違うという点は、ぜひ押さえておいていただきたいと思います。 鬼澤秀昌 司法試験合格後、教育系NPO法人の常勤スタッフとして勤務。その後、大手法律事務所を経て、教育・NPO分野に注力するため2017年に「おにざわ法律事務所」を開業。第二東京弁護士会・子どもの権利委員会、日本弁護士連合会・子どもの権利委員会などに所属。2020年から文部科学省スクールロイヤー配置アドバイザーも務める。 *『月刊教員養成セミナー2024年10月号』 「現役スクールロイヤーが法規を基にお答え 教育現場のグレーゾーン対応術」より 法律のプロが、教員生活で判断に困るグレーな事例の対応を毎月ズバッと解説! 関連法規の筆記・面接試験の過去問もご紹介します。教師になってからの実践にも、教員採用試験にも役立つ一石二鳥な連載です。是非ご覧あれ!