中学受験の志望校選び、本当に子どもの意思は尊重したほうがいい?【受験指導専門家が解説】
志望校選びで保護者ができること
子どもの主体性を優先した志望校選びというのは、実際はそれほど簡単ではないでしょう。お子さんが今、鉄道が好きでも、中学に入ったら急に別のものに興味が移ってしまうかもしれません。 保護者から見ると、鉄道研究会よりも、もっと重要度の高い判断基準(学校の設備や教育方針、進学先の大学など)があるのでは、と思ってしまいます。 「鉄道研究会じゃなくていいなら、他の学校も受けられた、みたいなね。よくあると思います。お子さんのやりたいことというのは、短い間に変わりますから。でもやはり傾向としては、お子さんの希望を優先したほうが、その後の学校生活の満足度は高いと思います。あくまで傾向として、ですか」 ただ現在、私立中学は東京都内だけでも180校以上、首都圏には310校以上あります。その膨大な数の中から子どもの力だけで志望校を決めるのは、かなり難しいかもしれません。 そこで、西村先生は実践的な方法を提案します。 「まずは保護者の方が、ここならお子さんを行かせたいという学校の候補をいくつかに絞る。そしてその中から、お子さんに選んでもらったらいいんじゃないでしょうか」
中学受験を経験した保護者がおちいりやすい失敗
続いて、中学受験でよくある疑問やお悩みについて、西村先生にお答えいただきます。 まず、中学受験経験のある保護者は、ない保護者より有利なのでしょうか? 「率直に言って、保護者さん自身の中学受験の成功体験を、お子さんに当てはめようとすると、だいたい失敗すると思います。一つには、学校の評価や人気は株価と同じように変動しますので、保護者の方の時代とはまったく違う状況になっています。渋谷教育学園渋谷のように約30年の間に偏差値が20以上ジャンプアップした学校もあります。広尾学園や三田国際も国際教育を進め、人気校になっています」 失敗してしまう! そのさらに大きな原因は? 「入試問題の性質が、保護者の方の時代から大きく変わっています。今は、いわゆる暗記問題が減って、自分で考えて解く思考型の問題が増えています。昔は、とにかく反復練習して頑張って覚えれば成績が上がりました。それはもう現在の中学受験では通用しなくなっています」 保護者が経験したかもしれないスパルタ式の勉強法は、子どもの受験勉強にはそぐわない、ということになります。 「第3回でもお話ししましたが、お子さんの思考力を鍛えるには、日常の“体験”と結びついた知識の下支えが必要になります。ですから、ドリルワークを強制的にやらせるよりも、まずはお子さんが、日常のいろんなことに興味を持てるように、働きかけてあげるのが大切だと思います。そこからお子さんが、自分で発見して考えを深められれば、自然に思考力のトレーニングになります」