第2次トランプ政権に女性たちが悲鳴。子育て支援サポートに「強く反対」、「祖父母に協力を求めればいい」発言で炎上
3.セクシュアリティ&アイデンティティ
トランプ次期政権の発足は、クィア(性的マイノリティ)の女性、トランスジェンダーの女性をはじめ、ジェンダーアイデンティティやセクシュアリティが「ヘテロノーマティビティ(heteronormativity、異性愛こそが社会の規範であるという考え)」に当てはまらないすべての人たちを、さらに不安にさせる可能性がある。 前の任期中にも、トランスジェンダーの人たちに認められた権利を奪おうとしていたトランプは、今回の大統領選の選挙活動中も、当時と同じような態度を見せている。 バイデン政権は公的な高等教育機関における性別に基づいた差別を禁止するため、教育改正法第9編(タイトル9)」の見直しを実施するなど、トランスジェンダーの学生たちの権利を守るための法改正を行ってきたが、トランプはそれらをすべて「撤回する」と明言している。 なお、トランプは同性婚などについての見解を何度も変えてきたが、ヴァンスは反対の姿勢を貫いている。
4.覆される価値観の進化
第2次トランプ政権で起こりうるこうした変化は、単独でも十分に、女性たちに重大な影響を及ぼす。だが、これらが同時に起これば、引き起こされる変化の二次的な影響は、さらに大きなものになる──社会における女性の立場は、どうなるのだろうか? トランプ次期政権が取り入れる可能性があるものとして注目される保守派の政策マニフェスト、「プロジェクト2025」は、「女性はシスジェンダーであり、異性愛者であり、母親であり、妻である」ことを原則とし、それを「伝統的価値観」という言葉で遠回しに表現している。中絶や避妊へのアクセスを制限していることが、そのことを明確に示している。 トランプはこのマニフェストを公には批判しているが、新たなホワイトハウスがこの価値観を受け入れたとすれば、どれほど甚大な、かつ長期的な影響が及ぼされることになるだろう? 女性や家族構成に関して「逆行する」考え方を強く支持するヴァンスの存在が、こうした懸念をさらに高めている。 女性たちが選択の権利や育児休業のほか、「自分自身の行動」について、あるいは「誰を愛するか」について、そして「自分の体に関して自ら決断できる」自立した未来に向けて、これまで苦労してようやく実現してきた“前進”を、彼らはどこまで“なかったこと”にできるのだろうか。 女性たちは“後戻りしない”をスローガンに掲げ、選挙戦を繰り広げたハリス副大統領は、主にこうした女性たちの自由を守ることを訴えた。ただ、仮に彼女が実際にアメリカの大統領に選出されていたとすれば、そのこと自体が、こうした価値観にとっての利益となっていただろう──世界中、特に若い女性たちを大いに奮い立たせるメッセージになっていたと考えられる。 今回の大統領選には、興味深い「2つの概念の対立」がみられた。「性的暴行で告発され、法的責任があると認定された男性、その言動に強い女性蔑視の傾向が見られる男性」と、「初の女性大統領」のいずれかを選択する機会でもあった。 こうした視点から見ると、選挙結果はさらに象徴的なものとなる。世界で最も裕福な超大国、自らを「自由世界のリーダー」と称する国が、女性ではなく、女性を明らかに軽蔑している男性を、リーダーに選出した。それは、どのようなメッセージを発したのだろうか。世界中の少女たちの希望に、冷や水を浴びせたのと同じだったのではないだろうか。
From Harper’s BAZAAR UK