労働移動の円滑化とリスキリング:岸田首相は何を目指すのか
人手不足を変革の好機に
しかし、今後、人手不足が一層強まることは確実で、日本の労働市場は大きく変わりつつある。賃金の持続的上昇によって成長と分配の好循環を実現するには、政府によるきめ細かな積極的労働市場政策の実現とともに、企業経営者の人事制度の見直しが不可欠である。人手不足は企業経営の転換を迫っており、日本経済の変革をさらに進める好機ととらえるべきであろう。
【Profile】
翁 百合 日本総合研究所理事長。1982年慶應義塾大学経済学部卒業、84年同大大学院経営管理研究科修士課程修了、日本銀行入行。92年日本総合研究所、2018年4月から現職。京都大学博士(経済学)。内閣官房「全世代型社会保障検討会議」構成員、内閣府「選択する未来2.0」懇談会座長などを歴任し、現在、内閣官房「新しい資本主義実現会議」構成員、税制調査会会長を務める。主な著書に『金融危機とプルーデンス政策』(日本経済新聞出版社)など。