おたねにんじん(12月24日)
全体が白っぽく、根はひげのように伸びる。高麗人参は普段、食卓に並ぶセリ科の赤いニンジンとは見た目が異なる。別種のウコギ科に属する。会津では、おたねにんじん(御種人参)の名で親しまれる▼朝鮮から伝わり、江戸時代に幕府が御種[おんたね]を大名に分け与えて栽培を奨励した。会津藩は基幹作物として生産に注力した。現在も長野県、島根県と並ぶ国内三大産地の一つだ。生薬として用いられ、疲労回復や免疫力強化などの作用があるとされる。収穫までに長い年月を要し、栽培には手間がかかる。希少さゆえにあまり出回らず、普及していないのが実情だ▼県会津地方振興局は近年、民間と共同で知名度向上に力を入れている。会津若松市や喜多方市の飲食店で来年2月までフェアを開催し、おたねにんじんを使った料理を提供している。7回目を迎え、ジェラートを新たに開発した。会津の人々と自然が育む伝統野菜にアイデアという養分が加われば、味わいは一層増す▼年末年始の繁忙期。仕事や宴席が重なり、心身ともに疲れがたまりやすい。会津に足を延ばし、温泉とともに、お店に立ち寄ってみてはどうか。滋味深い風味と栄養が、地酒とともに染みる。<2024・12・24>