インドネシアで増える「貧困ではないが、中間層未満」――プラボウォ新政権の独自色と取り組むべき課題
インドネシアは2040年前後まで人口ボーナス期が続く。しかし、若い国民が多いというだけでは経済成長は実現できない[就任式に臨んだプラボウォ新大統領(左)とジョコウィ前大統領=2024年10月20日、インドネシア・ジャカルタ](C)EPA=時事
10月20日、2月の大統領選で勝利したプラボウォ・スビアントがインドネシア共和国第8代大統領に就任した。プラボウォ新大統領は、国民協議会(MPR)議員を前にした就任演説で原稿も見ずに熱弁を振るった。予定の20分を大きく上回り50分以上にわたった演説からは、悲願だった大統領職を手に入れたプラボウォの興奮が伝わってきた。 就任式を終えたプラボウォは、スマンギ交差点からジャカルタ中心部のスディルマン通り、ホテル・インドネシア前のロータリー、タムリン通り、独立記念塔広場を通って大統領官邸に入った。思い返せば、これらの場所は、1998年の民主化運動において最終局面の現場となった地域である。スマンギから5キロほど北上すれば、デモの学生たちが軍に射殺されるという事件が発生したトリサクティ大学がある。その事件がきっかけとなって発生したジャカルタ・コタ(中華街)での暴動の後、スディルマン通りやタムリン通りは車通りも絶え、この日と同じように歩行者天国と化していた。そして、プラボウォが大統領に就任した議事堂は、約3万人の学生や市民が屋根の上まで占拠し、スハルト退陣を求めて籠城した場所である。
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川村晃一