年末に登場した謎の深夜番組『飯沼一家に謝罪します』 “儀式”ד謝罪”の名状し難い恐ろしさ
いま、さまざまな媒体で、とくに注目を浴びているのが「フェイクドキュメンタリー」形式のホラー作品だ。劇映画として翻案され大ヒットとなった『変な家』 は、ホラー作家・雨穴のドキュメンタリー風のWEB記事、動画が先立って話題となっていた。さらにはホラー作家・背筋による『近畿地方のある場所について』も注目を集めた。 【写真】『飯沼一家に謝罪します』恐怖の場面カット(複数あり) そして、架空の事件を題材とした不気味な展覧会「行方不明展」、YouTubeで配信中のホラー動画シリーズ「フェイクドキュメンタリーQ」、そして2024年春に放送されたテレビ番組「TXQ FICTION」の第1弾『イシナガキクエを探しています』(全4回/テレビ東京系)が評判になるなど、フェイクドキュメンタリー形式ならではの、リアリティを感じさせるホラー表現が求められている風潮がある。 2024年の年末には、『イシナガキクエを探しています』に続く「TXQ FICTION」 第2弾『飯沼一家に謝罪します』(全4回/テレビ東京系)が放送された。ここでは、現在、TVer、U-NEXTなどで視聴できる本シリーズ『飯沼一家に謝罪します』とは、どんな作品だったのか、何が描かれていたのか、そして作品自体が、あるいは無意識的に持つに至った根源的な恐怖を振り返っていきたい。 「TXQ FICTION」 は、大森時生、寺内康太郎、皆口大地、近藤亮太など、近年のフェイクドキュメンタリーブームを醸成してきた面々によるTV番組。『イシナガキクエを探しています』は、過去に失踪した女性「イシナガキクエ」の足取りを追うという、過去に流行した特別公開捜査番組のかたちのフィクションドラマである。 その内容は、皆口大地、寺内康太郎などによる「フェイクドキュメンタリーQ」にも似ているが、「TXQ FICTION」 はそれ自体がTV番組であることを利用し、よりTV風の演出でリアリティを醸成する特徴がある。深夜に何気なくTVを点けたときに、この番組に出くわしたら、本当に内容を信じてしまう視聴者も出てきそうだ。 もう一つ、この番組がYouTubeをプラットフォームとする「フェイクドキュメンタリーQ」と異なるのは、TV番組としての制約上、ある程度分かりやすく作らねばならない点だろう。YouTubeでは、謎めいてオチのないところが逆にコメント欄を盛り上げるなど、双方向的に作品が完成していくところが作品の人気を高める原動力となっていた。だからこそ、アヴァンギャルドな挑戦を次々におこなうことができたのだ。しかし地上波放送では、作品としてスタンドアローンで楽しめることも求められる。 ゆえに「TXQ FICTION」 は、いくぶん従来のホラー作品に近い保守性も持った内容だと指摘できるだろう。公開捜査番組のかたちで、少しずつ失踪事件の背景が明らかになり、想像もしなかった恐怖の真相が浮かび上がってくる『イシナガキクエを探しています』は、ネット上で複数の解釈が生まれる「フェイクドキュメンタリーQ」と比べると、解釈の自由度は制限されているものの、それだけに多くの視聴者に受け入れられる敷居の低さが長所となっている。今回の第2弾『飯沼一家に謝罪します』も、その点は同様だ。