東京科学大、国立大で異例の理事長職設置へ 東工大の大竹教授が就任「文化の違い理解」
1つの国立大学法人が複数の大学を運営する場合を想定し、政府は令和元年に国立大学法人法を改正。学長にあたる「大学総括理事」を設置できるようにし、理事長職を設けて経営と教学の分離を可能にした。東京科学大の新体制も、その制度を活用したものだ。
少子化への対処や国際競争の激化、ガバナンス強化など時代情勢の変化に応じ、各大学が独自の戦略を模索している。東京科学大は国が10兆円規模の基金により財政支援する「国際卓越研究大学」制度の認定を目指す方針で、新体制は次世代の国立大の在り方を占う試金石ともなりそうだ。
■「今も未来も大切にした強い大学に」
「東京医科歯科大は今日の命をどう助けるのかが、東京工業大は数十年先の産業を生むことが、それぞれの使命だ」。東京科学大の理事長に就任予定の大竹尚登氏は記者会見で統合する2つの大学の特徴をこう語り、「統合で今も未来も大切にした強い大学になれる」と抱負を述べた。
大竹氏は神奈川県出身。東工大大学院を経て、平成22年から東工大教授。研究推進担当の副学長などを歴任し、令和4年から科学技術創成研究院長を務めている。
専攻は機械材料学。ダイヤモンドをメタンなどの気体からつくる研究を手掛けてきた。民間企業とベンチャーの立ち上げや、戦略素材を巡る国際交渉をリードするなど実務にもたけており、24日の会見でも報道陣の質問にてきぱきと応じる姿が印象的だった。「若手の研究者がゆっくりテーマを考える時間をつくりたい」と展望も語った。
趣味はサイクリング。名古屋から東京まで自転車でほぼ走破したことも。文系にも関心が深く、米国の哲学者、ハンナ・アーレントの「人間の条件」を愛読しているという。(玉崎栄次)