山で遭難「遺体で発見」よりも厳しいケースとは? 捜索のプロも沈痛「かける言葉がみつからない」
遭難者を発見することが捜索隊の役割ではあるが、ご家族が「大切な人の死」を受け入れ、私たちを必要としなくなるその日まで、LiSSの役割は終わりにはならない。 遭難者の事故の原因や最期の状況、目にした景色を知りたいと思うご家族は多い。しかし私たちは、ご遺体が見つかった現場の状況から遭難の経緯や死因について想像することしかできない。 ご家族にとってはその状況を聞くことで、「亡くなるまで、山の中でひとりで怖かったろうな。苦しかっただろうな」とやりきれない思いでいっぱいになるが、それを伝えるのも捜索隊の大切な役割なのだと思う。 よく「時間が傷を癒してくれる」という。だから、どうしても「1年経ったから」「三回忌だから」と、よく「区切り」という言葉を使ってしまうが、それは私たちのような第三者が勝手に決めてしまっていることなのかもしれない。物理的な時間の経過だけで、ご家族の心情は測れるものではない。 ※『「おかえり」と言える、その日まで―山岳遭難捜索の現場から―』より一部抜粋・再編集。
デイリー新潮編集部
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