英国からマツダMX-5へ愛を込めて… |4世代のロードスターでイギリス横断の旅
MX-5の魅力に沼り始めた筆者、この沼は底なし沼だったかも…?
●Day2 初日は霧が晴れると猛烈に暑かったが、2日目は涼しく、長袖に着替えて北へ向かった。景色が劇的に変わり、平坦な牧草地から美しい丘陵地帯へと移り、カンブリアの風光明媚な田舎道が現れた。退屈な直線が続く高速道路ではMk2の真価を発揮できなかったが、ついにコーナーの多い挑戦的なステージに挑む時が来たのだ。 私たちの車列はハイウェイを離れた瞬間、まるで銀行強盗が警察から逃げるように四方八方へと散らばった。ここからは自分との戦いだ。ブレーキをほとんど使わず、完璧なシフトダウンを決め、直線ではアクセルを奥底まで踏み抜く。坂の頂上を越える瞬間は少し浮かび上がる感覚さえ味わった。気分はペターソルベルグだ。 コーナーを攻め、風景が飛び去る中、エンジンの唸り声が私をさらに煽る。再集合地点に到着した時には、体中に鳥肌が立ち、アドレナリンの味が舌の上で感じられることに気がついた。Mk2は完全に私の心を掴んでいたのだ。 ウィンダミア湖畔でのショートブレイクで心身を落ち着かせ、ここで次のMX-5にチェンジすることに。私が乗り込んだのは2014年製25周年記念モデルのMk3(NCロードスター)だ。内装のスポーティなデザインは、前の二つの世代よりもMX-5のスタイルにマッチしていたが、どこか遠い存在に感じた。より実用的で日常的に使える車を目指した結果、Mk3はMk1やMk2の荒々しい個性を失ってしまったように感じた。決して速さを失ったわけではない。しかしその速さは銀行強盗の逃走というよりかは、仕事に遅刻して急いでいる時に近い。 スコットランドに入ると、予想通り豪雨が降り始めた。最初の誓いを守り私たちはルーフを閉じることはなかったが、さらに北へ進むにつれ、雨は激しさを増し、交通渋滞に巻き込まれて私たちはずぶ濡れになった。 私の同乗者、スコットランド人のジム・マクギルは、北部の土地を自分の手のひらのように知り尽くしていた。そこで、我々は隊列を離れて独自のルートを選択することに。エディンバラに向かって田舎道を突っ切ると、ジムが言っていた通り、道が開け、まるで私たち専用のレーストラックを走るようにコーナーを攻めていった。前方の車両を次々と追い越し、ケルティックな風景の中を力強く駆け抜けた。 道路には水たまりが広がっていたが、Mk3はその水を勢いよく飛ばしながら、全く動じることなく進んでいった。コーナーでは驚くほどグリップが効き、私が思っていた以上にこの車はしっかりとした走りを見せてくれた。私はその強さに引き込まれ、危険なラインギリギリまでアクセルを踏み込んだが、それでも決して不安を感じることはなかった。 このようなシチュエーションを経て、Mk3に惚れ込むのは、当然と言えば当然だろう。力強く、威厳があり、誰も止められない存在のように感じた。しかし、それでも私にとっては、何かが足りなかった。個性を感じることができなかったのだ。 そのような少し複雑な思いを抱えつつも、私たちはスコットランドの冷たい雨の中を突き進み、次第に最終目的地に近づいていった。 ●Day3 最終日は暗雲が空を覆い、旅の終わりが近づいていることを感じた。私たちは30周年記念モデルのMk4(NDロードスター)に乗り換え、最後の区間を出発した。スコットランドのハイランド地方は荒々しく、ルーフを開けたまま乗る私たちには寒さが骨身に染みたが、それと同時にシートヒーターのありがたさを痛感した。 車は、レーシングオレンジの塗装が目を引き、カーボンファイバーのドアトリムやスエードダッシュ、オレンジステッチが施された内装は、スーパーカーに匹敵する雰囲気を醸し出していた。 時折、「私こそが道路の主人公だ」と思わせてくれるような車があるが、駐車場でアクセルを数回踏み込むだけで、Mk4がそうした車であることがすぐに分かった。マツダはMk4にスポーツカーとしての威厳を再び注入したのだ。これまでのMX-5とは異なり、速度計ではなく、タコメーターが中央に配置されていることからも明らかだ。これはつまり、Mk4はエンジンを存分に唸らせろという意図があるに違いない。 北海沿いの道を走りながら、MX-5が英国の道に最適な車であることを再確認した。181馬力の2.0リッターエンジンは、まるでこの道を走るために生まれたかのように、断崖をも軽快に走り抜けた。 最終目的地の約20マイル手前で道は内陸に向かって曲がり、ヘアピンカーブがいくつか現れた。この最後の区間は、長い直線と高速コーナーが絶妙に混ざり合った理想的なステージで、おそらく旅の中で最も楽しい時間だった。 ついにゴール地点であるジョン・オー・グローツの駐車場に到着し、車から飛び降りた。強烈な風に吹き付けられ、まるでまだ110km/hで走り続けているような錯覚に陥った。競争心を持って旅をしていたわけではないが、ジョン・オ・グローツの看板に向かって駆け出し、チェッカーフラッグを手に取るような気持ちで旅は終わりを迎えた。私たちは四季折々の天候を体験し、4世代のMX-5を駆け抜けた。この旅は、私のMX-5初体験を最高の形で彩ってくれたと自信を持って言える。 自動車ジャーナリストが全会一致で称賛する車は少ないが、MX-5はその数少ない幸運な一台だ。もはやただの車ではなく、まさしく人馬一体を体感させ、どんな時でも楽しい時間にしてくれる存在なのだ。 Words and Photography: Trinity Francis まとめ:オクタン日本版編集部
Octane Japan 編集部