米津玄師、宮崎駿との出会いで音楽人生折り返し 新アルバム「LOST CORNER」に込めた全て
さらに「おそらくこれ以上光栄なことはないだろうなと思うので、あの体験を大事に抱えてやっていけたら、もうそれでいいよなという気持ちになって」とほほ笑みながら、「それ以前にはとても戻れないというか、むしろ原点回帰して、子どものような無邪気な気持ちで音楽を作ろうという気持ちに至りました。『LOST CORNER』に入っている曲も、『地球儀』以降に作ったものはほとんど一人で作っています。自分は最初から、パソコンとかマルチトラックレコーダーに打ち込んだりしながら一人で音楽をやっていたんですね。その頃はとにかく楽しくて、ただただ『曲を作りたい』という気持ちで学校から急いで帰ってきたりして。もう一度、そういう気持ちで音楽に向き合っていきたいなと思いました。『地球儀』を折り返し地点にして、山を登って下りているようなイメージです」と話す。
「失くすために生きている」
音楽を通してたくさんのすばらしい出会いを果たしてきた米津。ニューアルバム「LOST CORNER」には、彼のあらゆる心象風景、今の思いまでが刻まれている。 現在地について「30代になって、世間一般的に言えばまだ新米ですが、自分の考え方など、それなりに10代、20代で積み上げてきたもの、感じてきたものとは、ちょっと違う感覚になってきたところがあって」と切り出した米津は、「10代、20代は、自分の足りない部分をつぶさに見つめて、『こういうものがほしい。ああいうものがほしい。あれもこれもほしい』と何かを獲得していくために邁進しているような生き方だったように思います。でも30代になってくると、明確に立場も変わってくるし、時間の経過と共になくなっていくものもあって。それこそニコニコ動画がサイバー攻撃を受けて入れなくなったり、何が起きるかまったくわからない時代ですよね。今自分がいる環境も、決して当たり前ではない。物理的に失うものもあれば、場所として残っていたとしても、あの頃に見た景色じゃないなと感じるものもある」と巻き起こる変化について言及。