米津玄師、宮崎駿との出会いで音楽人生折り返し 新アルバム「LOST CORNER」に込めた全て
名曲「Lemon」は米津の亡くなった祖父への思いまでを込めた1曲だが、「あんなに広がるとは思っていなかった」と大ヒットは予想外のことだったという。一体、「Lemon」によって彼の中にどのような変化があったのだろうか。 米津は「とんでもない広がり方をしました。それは半分事故のようなものというか、こちら側とすると再現性もないので。とても有機的な体験だったと思います」と率直な思いを口にし、「同時にポップスの限界みたいなものも感じて。たとえばカレーでも、嫌いな人っているじゃないですか。どれだけ広く届いたとしても、みんなが知っている曲ということだけで『嫌いだ』という人もいる。ヒットしたということは、『その中に入れない』人を生み出したことにもなりますよね。ポップスってどこまで行ってもそういったものだなと思うんです。誰かに曲を届けて、その人がどう感じるかというのは最終的にコントロールしようがないもの。それをコントロールしようなんて、高慢な考え方だなと思うんです。そういったコントロールできないことに一喜一憂をしたところでどうしようもないので、自分にとって大事だと思うものを死守し、それを深く見つめていった方がいいだろうという方向転換がありました」と自身の心と足元を見つめ直す機会になった様子だ。
『君たちはどう生きるか』主題歌は「最大級の誉」
『君たちはどう生きるか』の主題歌「地球儀」は、宮崎監督との出会いから5年、制作期間4年を注いで完成した。静かな曲調の中に生きていく希望の光がキラリと輝く楽曲は、生と死が渾然一体となった不思議な世界に迷い込んだ主人公がたどる旅路を締めくくるにふさわしい1曲となった。かねてより宮崎監督を敬愛していたという米津は、「宮崎さんと向き合ってお話できる機会があるなんて思っていなかったし、あの体験は、走馬灯の一番最初に浮かんでくるものだろうなと思います」とにっこり。
「子どもの頃からごく当たり前に、宮崎さんの作った映画を観てきました。漫画版の『風の谷のナウシカ』はエポックメイキングな体験をした作品です。自分の中の大きな根っこの部分は、すべて彼から得たものなのではないかと思うくらい」とあらゆる影響を受けてきたそうで、「自分で音楽を作るようになってからは、宮崎さんご自身に対する興味も高まりました。ものすごい熱意を持って、作品を作り続けてきた方。決して宮崎さんと同じようにはできないけれど、やっぱりああいった熱意やひたむきさは絶対に忘れちゃいけないなと思います。ドキュメンタリーや書籍を見返しては叱咤激励されたような気持ちになる。北極星のような存在で、宮崎さんを基軸に動いているようなところがあります」と並々ならぬ敬意を表し、「『地球儀』を作れたことは、少なくとも今までの人生において最大級の誉」だと熱を込める。