愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「気になる“マイナス金利政策解除”のタイミングと今年の“年末商戦”」を解説
本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。 12月13日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「気になる“マイナス金利政策解除”のタイミングと今年の“年末商戦”」というテーマでお話を伺いました。
◆7月~9月期のGDPは4四半期ぶりのマイナス成長
浜崎:それでは宗さま、今回は「気になる“マイナス金利政策解除”のタイミングと今年の“年末商戦”」についてお話しいただけるということですが。 やしろ:早いもので今年も終わりです。ズバリ今の日本の景気は、良いのでしょうか? 悪いのでしょうか? 宗正:残念ながら、あまり良くないと言うか、また悪くなってきた、そんな感じですね。 やしろ:「ちょっと景気も上を向いてきたかな」という空気を感じているような気もしないでもないのですが……。 宗正:景気を意味するGDP(国内総生産)の7月~9月期の数字が確定しました。前期比0.7%のマイナス、同じ状況が一年間続いた場合を意味する年率換算で前期比2.9パーセントのマイナス。マイナス成長は4四半期振りのことです。主な理由はGDPの半分以上を占める個人消費、ここが良くない。物価高で食品の売れ行きが鈍ったことに加えて、夏から秋にかけてのあの酷暑が人の動きを抑えてしまったようです。 やしろ:本当に今年は暑かったですよね。 宗正:暑すぎて衣料品の売り上げも伸びませんでした。個人消費以外には、企業の設備投資が実は低調なんですね。欧米など海外景気の先行き不透明感が、新規の設備投資を鈍らせています。
◆急速に進んだ円高の理由は?
やしろ:最近、為替市場では急速に円高が進みましたが、個人消費にとっては、物価高を抑えるという意味で良いことなのでしょうか? 宗正:国内に流通するモノやエネルギーの多くが海外からの輸入品ですから、そこだけとらえれば円高は個人消費にとってプラスです。それよりも、何故このタイミングで急速に円高が進んだのか、気になりませんか? やしろ:確かに、気になります。何故でしょうか? 宗正:長らく続いたこの国のマイナス金利政策が解除されるのではないかと、そんな見方が為替市場で拡がったからなんです。 日本銀行の植田総裁の「年末から来年にかけて、一段とチャレンジングな状況になる」といった発言をきっかけに、今が1ドル145円台の半ばですから、ひと月前と比べると5円ほど一気に円高が進みました。マイナス金利政策が解除されれば、アメリカとの金利差が縮小する、ということは円高になるんじゃないかと。 一方でマイナス金利政策は、景気が改善しないからこそ、続けてきた訳です。先程お話した通り、確定したばかりの直近のGDPは、4四半期振りのマイナス成長ですから。本来は、景気が良いときの利上げです。日銀は今、本当に難しい舵取りを迫られています。 やしろ:まだまだ物価高も続いているし、あまり景気が良くなくても、日銀は金利を引き上げざるを得ないということですか? 宗正:物価高も日銀が利上げをしたい1つの理由ですが、年が明けて毎年2月頃から始まる「春闘」、ここでも全国的に賃金水準が引き上げられそうな動きがあります。これも利上げに踏み切りたい理由の1つです。賃上げと利上げが同時進行でなければ、国民負担は増すばかりですからね。