【マイナ保険証3兆円の利権構造】見積もりの10倍に膨れ上がったマイナ事業 総務省の天下り団体と「ITゼネコン」5社連合への予算の流れを詳細図解
別掲の図は、国のマイナ関連の補助金の流れの一部を整理したものだ。 まず総務省から自治体に「マイナンバーカード交付事業費・交付事務費補助金」(2015~2024年度の合計約7382億円)が交付され、その半分以上が自治体から同機構に交付された。それとは別に、2020年度からは自治体へのネットワーク接続などを推進する「デジタル基盤改革支援補助金」(2020~2023年度の合計約6988億円)などが総務省から同機構に直接交付された。
5社連合のみの応札
最大の問題は、これだけの税金を任せられている機構のマイナ事業費の使い方だ。 政府が進めるマイナ事業など行政のデジタル化は「IT公共事業」と呼ばれる。行政のシステム開発に巨額の予算がつけられ、それを「ITゼネコン」と呼ばれる電気・通信分野の大企業が受注、下請けなどに仕事を回していく仕組みが公共事業と同じだからだ。 マイナンバー制度の中核システムを受注したのは、NTTの長距離通信やプロバイダ事業を行なうNTTコミュニケーションズを中心に、NTTデータ、日立製作所、NEC、富士通の5社の連合だった。5社連合は2014年1月に同機構の前身、地方自治情報センターから個人のマイナンバーを作る「番号生成システム」の設計・開発業務を68億9580万円で受注、同年3月には内閣府からマイナンバー制度の中核システムを123億1200万円で受注した。いずれも入札には5社連合しか参加せず、無競争での落札だった。
元経産官僚で政治経済評論家の古賀茂明氏が指摘する。 「政府がマイナカードの普及を推進するのは、そこに利権があるからです。紙の保険証であれば病院の窓口で本人確認するだけで済むが、マイナ保険証にすれば、病院の窓口にカードリーダーを置き、オンラインで本人確認を行なうためのシステムを作り、運用しなければならない。それだけでも莫大なカネが動く。 しかも、マイナ事業の中核システムの入札は5社連合のみの応札で決まった。競争がなければコストが下がらない。役所で最初からどの企業にやらせるかが決まっていて、事前に企業側とどんなシステムを作るかを話し合い、他の企業が入札に参加しにくくして本命に落札させるという官製談合的な構造さえ疑われる。しかも、システム開発においては、最初に受注した企業がその後の追加事業の入札でも有利になる」 実際、その通りだった。 機構からはその後も5社連合側にシステム運用などが追加発注され、マイナンバー導入初期に機構が発注した当初契約額の645億円から1656億円へと2.6倍に増えていたことが報じられた。 「そうした利権構造のなかで重要な役割を担っているのが地方公共団体情報システム機構でしょう。マイナの全体システムは複数の省庁と全自治体が関わるため、その実務を担う機関として設立されたものです。役所が企業と直接やり取りすれば癒着を疑われるから、外郭団体にやらせるのは常套手段。構造的には、官民癒着の緩衝材のような役割を担っていると見ることができる。同機構を通じた利権構造ができると、官僚が暴走して予算が膨らむのです」(古賀氏) 当人たちはそうした批判にどう答えるのか。本誌・週刊ポストは総務省OBの菅原泰治・副理事長とNTT出身の樋口浩司・理事を直撃。同機構に回答を求めるとともに、5社連合の各社に入札の経緯などに関しても聞いた。 ■さらに読む→【官民癒着の構造】マイナ保険証3兆円利権「天下りキーマン」を直撃 NTTコミュニケーションズを中心とする「ITゼネコン5社連合」が明かす「入札の経緯」とは ※週刊ポスト2024年11月29日号