「米粉」もちもち新商品続々 国も後押し、需要量3倍へ
揚げ物や焼き菓子、ラーメンなどで米粉を使った商品開発が相次いでいる。食感を向上させる米粉の特長が消費者に浸透し、小麦のグルテンを避ける健康志向を捉える。利用拡大に向けた国の後押しもあり、2024年度の米粉用米の需要量は、10年前の3倍近い6万4000トンまで拡大する見通しだ。 【画像】もちもちした食感の「冷麺」「どら焼き」、米粉用米の需要推移のグラフ 米粉を使った商品開発が活発だ。ぐるなびが実施主体の米・米粉消費拡大推進プロジェクトは、「米粉グルメフェア」を10、11月に展開中だ。全国2000店舗以上で米粉料理が振る舞われており、参加店舗数は前年から700近く増えた。
スイーツや麺で
東日本を中心に店舗を展開する洋菓子店のラ・メゾン・アンソレイユターブルは同フェアに参加し、21店舗で米粉を生地に配合したタルトを提案する。水田桂子シェフパティシエは「フォークが通りやすい、ほろほろ食感の生地に仕上がった」と評価する。米国に本社を置く大手チェーンのクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンは昨年に続きフェアに参加。期間限定で販売していた米粉を使ったもちもち食感のドーナツの、今年11月からの定番化に踏み切る。 大手米粉製粉業者のみたけ食品工業によると、家庭向けの米粉も引き合いが強い。スーパーではプライベートブランドで米粉を販売する店舗も目立ち、「自社の米粉製造量も順調に増えている」(同)という。 米粉の注目度は、ウクライナ侵攻に伴う食料安全保障への危機感から急速に高まった。米は国内で自給できる上、米粉用米の作付け拡大は水田の維持にもつながる。 農水省は22年度の補正予算で米粉の利用拡大支援対策事業を始めた。140億円の予算をつけて、米粉の特長を生かした商品開発、米粉や米粉を使った商品の製造能力強化などを支援した。22年度の採択件数は、商品開発が83件、製造能力強化が8件に上り、計画ベースで1・5万トンの米粉需要を新たにつくった。23年度は20億円の予算で同様の事業を進めている。
専用品種に期待
同事業の一環として23年から始動したのが、米・米粉消費拡大推進プロジェクトだ。テレビCMや交流サイト(SNS)、特設情報サイトで、米粉の特長や活用事例をアピールする。同省穀物課は、「揚げ物ではサクサク感が長持ちするなどの米粉ならではの利点が浸透してきた」とみる。 生産側では今後、米粉専用品種の作付け拡大が焦点となる。同省によると、23年産で「ミズホノチカラ」など専用品種の作付面積は1000ヘクタール。米粉は今後も堅調な需要が見込まれる中、製粉適性が高く調理に向く専用品種への期待が高まっている。 (鈴木雄太)
日本農業新聞