日本呼吸器学会・髙橋和久理事長に聞く“新型コロナ後”の学会運営
◇市民の声聞く機会増を
日本呼吸器学会に限らず、これまでの学会はややクローズドな傾向があり、市民に対する働きかけ、広報が足りていなかったと思っています。 PPI(Patient and Public Involvement=医療研究開発における患者・市民参画)という概念があります。たとえば、新薬などの臨床試験は医師主導で実施するのが一般的です。それとは異なり患者さんが何を望むかを聞き、提案された方向で臨床試験のデザインを構築するのがPPIです。PPIに代表されるように、学会は一方的に情報を発信するだけでなく、呼吸器疾患患者さんやご家族、さらには市民の声を聞く機会を増やすべきです。 一部の呼吸器疾患では患者会との連携もありますが、アクティブとは言い難い状況です。学会としてリーダーシップをとり、患者さんへの働きかけをしっかりと行いたいと考えています。
◇「呼吸器感染症は予防可能」―さまざまな手段で周知を
市民向けの企画を増やすことも大切です。すでに学術講演会や各地方会で開催した市民公開講座などの動画をYouTubeの日本呼吸器学会チャンネル(https://www.youtube.com/@%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%91%BC%E5%90%B8%E5%99%A8%E5%AD%A6%E4%BC%9A-x4i/videos)で配信しています。これをさらに活性化させ、配信数を増やしていきたいと考えています。 2024年から、厚労省が定める結核予防週間(毎年9月24~30日)は、呼吸器感染症予防週間を兼ねることになりました。今年は日本呼吸器学会と日本感染症学会、日本化学療法学会が共催してウェブセミナーを開催しました(上記YouTubeチャンネルにアーカイブあり)。3学会で協力して、呼吸器感染症に関する啓発活動をしていきます。 また、この3学会は9月に共同で厚生労働大臣に「新型コロナウイルス感染症への対応および呼吸器感染症予防に関する要望書」を提出し▽新型コロナ治療薬への公的支援の再考▽新型コロナウイルスワクチンの費用負担軽減を含む接種推進▽高齢者肺炎球菌ワクチンの対象拡大――などを要望いたしました。 こうした活動を通して、呼吸器感染症は予防ができることを知っていただけるよう取り組んでまいります。
メディカルノート