東京五輪代表争いへ出揃ったMGCメンバーから浮き彫りになった女子マラソンの弱点
不思議に思い、全国高校駅伝、全日本大学女子駅伝、全日本実業団女子駅伝をすべて出場したことのある元選手に話を聞くと、「私が感じた注目度は、高校、実業団、大学の順番でした。高校を卒業して実業団に進む選手は、『絶対にオリンピックに出るんだ!』という意識の高い選手が多いと思います。大学は競技レベルも高くないですし、駅伝を中心にまわっている印象でした。大学を卒業して実業団に進んだとしても、意識の差と実力差が埋まらないような気がします」と教えてくれた。 確かに取材をしていても、インカレの女子長距離種目はインターハイよりもレベルが低くなることが多い。その反面、10月の全日本大学女子駅伝、12月の全日本大学女子選抜駅伝(富士山駅伝)がテレビ放映されるなど、女子大生ランナーのメディア露出は少なくない。 大学駅伝では毎年のようにスーパールーキーが登場しているが、そこから日本のエースに羽ばたく選手はなかなか出てこないのだ。男子はマラソンが低迷すると箱根駅伝がスケープゴートにされることが多かったが、女子マラソンの“低迷”は「大学」に原因があるのかもしれない。以前よりも高校トップクラスの大学進学者が増えていることを考えると、大学の4年間が女子マラソン界のレベルを引き上げるポイントになりそうだ。 この1年ちょっとで日本記録が二度も塗り替えられた男子と比べて、女子のマラソンは盛り上がりに欠ける部分がある。 MGCファイナリストの数も男子の半数ほどしかいない。レベル低下も囁かれているが、今年2月から導入された世界ランキングの順位を見てみるとさほど悪くない。 2019年3月5日時点で松田が22位、前田が51位、小原が76位、野上が99位。101~200位には13人もいる。松田の上には、ケニア・エチオピア勢を除くと、ベラルーシの選手が1人いるだけだ。一方の男子は大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)が23位、設楽悠太(Honda)が46位、服部勇馬(トヨタ自動車)が47位、中村匠吾(富士通)が99位。「メダル」への期待度は男子と同じくらいあるといってもいいだろう。 男子はMGCファイナリストが30人いるものの、そのなかに名門・旭化成の選手が1人もいない。ニューイヤー駅伝は3連覇中だが、マラソンでは大苦戦している。リオ五輪代表の佐々木悟もびわ湖で失速した。ただし、4月30日までは、「ワイルドカード」(2時間8分30秒以内 or 上位2つの平均記録が2時間11分00秒以内)でMGCへの出場権が与えられる。故障の影響で東京マラソンの出場を見送った村山謙太と深津卓也あたりが、海外レースで奮起できるか。 振り返るとコニカミノルタとトヨタ自動車もニューイヤー駅伝で優勝した年はマラソンでもうひとつだった。しかし、MGCにはコニカミノルタが2名、トヨタ自動車が3名のファイナリストを送りこむことに成功している。ニューイヤー駅伝を勝つことで、精神的に満足してしまう部分があるのかもしれない。駅伝とマラソンの両立はなかなか悩ましい問題のようだ。 (文責・酒井政人/スポーツライター)