【インタビュー】世界の最新IoTプロダクトやスマート家電を擁するSB C&S、“AI”が起こすゲームチェンジで商機拡大
世界の最新IoTプロダクトやスマート家電を次々に日本市場へ導入し、注目を集めるSB C&S。限られたリテラシーの高い人だけでなく、より幅広い層への普及が期待されるなか、“AI”が起こすゲームチェンジに目を光らせる。市場創造へ向けた意気込みを同社コンシューマ事業本部 商品戦略本部長・榎揚一朗氏に聞く。<インタビュアー 音元出版 代表取締役・風間雄介> 【画像】四隅を100%カバーするサイドブラシを搭載した最高峰モデル「Roborock S8 MaxV Ultra」 ■進化が著しいロボット掃除機のブレイクスルーを牽引 ―― 世界の最新IoTプロダクトやスマート家電を次々に日本市場に導入される御社の取り組みが注目を集めています。今回は多岐にわたる商品カテゴリーのなかから、Roborock(ロボロック)のロボット掃除機、VITURE(ヴィチュアー)のスマートグラス、GLIDiC(グライディック)のイヤホン、そして、スマートホームにつきまして、市場展望や取り組みについて伺って参ります。まずはロボット掃除機についてお願いできますか。 榎 今、一番力を入れているのがロボット掃除機です。世帯普及率はまだ10%そこそこなのですが、もっと普及していても不思議はない大変便利な商品です。機能もどんどん進化しており、本体を収納するドックにはゴミの収集機能を備え、水拭きに対応したモデルではモップの洗浄や乾燥を自動で行ってくれるものもあります。 私どもが8月に発売した「Roborock S8 MaxV Ultra」は、「限界を超えて。理想に手を伸ばせ。」をキャッチコピーに掲げ、従来苦手とされていた四隅にも100%届くサイドブラシを搭載し、まさにロボット掃除機の限界に挑んだモデルになります。スティック掃除機と併用することを前提としなくていい、そんなところまでロボット掃除機の技術は進化しています。 「S8 MaxV Ultra」も水拭きに対応していますが、きめ細かな水拭き掃除のみならず、モップを温水と洗剤で自ら自動で洗浄し、洗い終わったら乾かし、さらに、水拭きやモップの洗浄に必要な水の給水や洗剤の投入も自動で行ってくれます。 ロボット掃除機では人気モデルでも、家具にぶつかったり、障害物を引きずったりする光景がよく見られるのですが、「S8 MaxV Ultra」は2つのカメラと高精度のレーザーセンサーを備えた賢い動きで、本当に驚くほど緻密に効率よく掃除ができることも大きな特長です。 5万円以下で購入できる安価なロボット掃除機が出回り、しかも、基本的な機能についてはさほど変わりないものになってきていますから、安価なメーカーでは実現できないこうしたプラスアルファの部分が、市場をもう一段ブレイクしてくれると期待しています。 ■ディスプレイの新たな選択肢「スマートグラス」。体験機会増が普及のカギ ―― スマートグラスも非常に好調とお聞きしています。 榎 100インチを大きく上回る大画面が目の前に広がるVITURE(ヴィチュアー)のXRグラスを展開しています。フルHDの鮮明な映像で映画や動画を鑑賞する楽しみ方はもちろん、軽量でスタイリッシュなデザイン、また、外側への映り込みを防いでプライバシーを保護できるため、移動中に仕事で活用されるケースも見受けられます。 機能・性能がどんどん良くなっていますから、テレビの代わりにして映画やゲームを楽しむのもお薦めですね。ただ、まだまだご存じない方がとても多いのが最大の課題。購入されているのは主にガジェット好きの方で、店頭でも展示が限られています。 まずは店頭でしっかりとお客様に体験していただき、商品の良さを理解してもらわないことには始まりません。機能面からはさらなるアップデートも期待され、体験機会をもっと増やして需要を喚起していきたいですね。 ―― スマートグラスのカテゴリーでは「XREAL」の取り扱いもされています。 榎 「XREAL」も素晴らしい商品です。スマートグラスはやっとスタートラインに立ったところですから、複数のブランドを扱えることで相乗効果も生まれます。ガチガチで向き合うよりも、店頭でスペースを確保するなど有利に働くと考えています。 こうしたことは過去にもパソコンソフトの時代から経験してきていますから、皆さんにもご理解、ご評価いただいていると確信しています。商品が良ければ必ず売れる単純な図式ではありませんから、タッグの強みを活かして頑張っていきたいですね。 ―― 一般の方に対し、用途や使い方、楽しみ方をどう広めていくのか。 榎 やはり、店頭での体験をもっと増やし、「こんなふうに使えるんだ」とお客様に実感いただく機会を増やしていくこと。広告や宣伝でも機能を謳うのではなく、お客様が使用されるシーンが想起できる伝え方が重要になります。ユーザーベネフィットをお伝えし、それがお客様にきちんと伝わり、店頭へ足を運び、体感して魅力を実感いただき、そして購入へという流れを愚直に構築して参ります。 ―― 価格面などのハードルはもちろんありますが、ひとつの選択肢になれば、映像を取り巻く日々の生活がさらに面白くなってきますね。 榎 映像を見るデバイスは、テレビ以外にもスマホやタブレット、スマートプロジェクターなどさまざまな選択肢が増えています。家でいつでもどこでも映画館のように映像が楽しめる、そんな機運の盛り上がりを感じています。映画にとどまらず、ゲーム、さらには仕事まで、スマートグラスの魅力を伝えていきます。 若い人があまりテレビを購入しなくなったと言われています。スマホやタブレットで十分という人もいれば、スマートプロジェクターを使って大画面を楽しまれている方もいます。テレビ番組ならこれ、映画ならこれといった用途による使い分けもあるはずで、ヘッドホンなどの音を組み合わせた提案にも力を入れていきたいですね。 ■利便性高めるシーン提案がスマートホームを身近にする ―― ヘッドホン、イヤホンでは、昨年末に発売されたGLIDiC(グライディック)のオープンイヤータイプ「GLIDiC HF-6000」が人気を集めています。 榎 “ながら聴き”タイプの広がりを実感しています。海外でもショップにShokzのながら聴きモデルがズラリと展示されていて、お客様が熱心に商品選びをされている光景を目にすることがあります。 ヘッドホン・イヤホンもこれまでのように勢いよく伸長していくことは考えにくく、完全ワイヤレスだけでは価格競争の渦に巻き込まれてしまいます。立体的に包み込まれるように音楽再生を楽しめたり、先日アップルから発表されたヒアリングをサポートしてくれたり、そうした新しい付加価値に商機をみいだしていきたいですね。 ―― はたして進捗はしているのか、判断の難しいスマートホームについての展望と取り組みをお聞かせいただけますか。 榎 スマートホームは、「テレビ」「冷蔵庫」「イヤホン」のようなひとつのカテゴリーで捉えることがむずかしく、市場規模もなかなか把握しにくいのですが、最近では家電とSwitch Botのハブを組み合わせることで家電をスマホでコントロールすることが可能となり、エアコンとハブを一緒に購入されるお客様もこの夏は目につきました。少しずつですが、ステップアップしているのかなという印象です。 上位モデルではIoTリモコンに対応した機能がすでに搭載されている例も少なくありません。ただ、これもスマートグラスと同様になかなか浸透していません。「難しそうだな」と敬遠されている方もやはり少なくないと想像されます。 ここでもまずは、体験してどんなことができるのか理解を深めてもらうこと。たとえば子育てのご家庭なら「スマートロック」がお薦めです。お子さんを抱っこして、もう一方の手では荷物も持ち、ドアを開けるのに苦労した経験をされた方も少なくないと思います。そんなとき、スマートロックならドアに近づくだけで自動で解錠できます。 「スマートホーム」という言葉を広げるよりも、便利なシーンを提案したら、それがスマートホームだったということなのかもしれないですね。 ■ズバリ!これからの注目は「AI」 ―― これから特に注目されているポイントは。 榎 やはり「AI」ですね。IoTにAIが加わることで、いろいろな市場にゲームチェンジが起こる、そこをしっかりと掴んでいきたい。たとえば、先ほどお話ししたロボット掃除機 「Roborock S8 MaxV Ultra」も四隅の認識はAIで判断しています。 今、Chat-GPTと連携したAIボイスレコーダー「PLAUD NOTE(プラウドノート)」に力を入れています。録音した音声データを自動で高精度にテキスト化してくれることはもちろん、複雑でまとめにくい内容をきちんと理解して要約してくれる機能も備えています。私も普段使用していますが本当に便利で、ぜひ一度お試ししていただきたいですね。 ICレコーダーにAIが入ることで、従来は1万円以下で販売されていたICレコーダーが、2万5千円という価格でも価値が認められ、数多くのお客様にご購入いただいています。既存のICレコーダーに取って代わるのではなく、新しい市場を創造することができます。 ヘルスケアもAIとは非常に相性のいいカテゴリーです。当社では「Oura Ring Gen3」(オーラリング第3世代)などの健康管理ができるスマートリングを取り扱っています。手首に装着するタイプは寝るときに邪魔で外されている方も少なくないようですが、指輪だと気にならないので装着率が高まるようです。 日頃の運動や睡眠のデータから、健康状態を把握する情報や改善に役立つアドバイスを提案してくれるスタイルが、ハードルを下げることでもっと当たり前になってくるのではないでしょうか。スポーツチームではすでに、選手のコンディションを把握するために使用している事例も見受けられます。 ■ドラッグストアショーで連日行列の注目の的「スマート耳かき」 ―― 顧客接点を拡大するというポイントから、リアル店舗に対する施策の他に、力を入れていらっしゃる取り組みはございますか。 榎 8月30日から9月1日まで三日間にわたって東京ビッグサイトで開催された「JAPANドラッグストアショー」に初めて出展しました。日本チェーンドラッグストア協会によるヘルス&ビューティケア関連商品を集めたアジア最大級の規模を誇る展示会で、SB C&Sでは美容やヘルスケア関連商品の展示を行いました。 そこで注目を集めたのが「スマート耳かき QE-1」という商品です。耳かきの先にカメラがついていて、アプリで耳の中の映像を見ながら掃除することができるというものです。初日は業界関係者、2日目・3日目には一般の方も来場ができ、スマート耳かきの前には連日かなりの列ができて注目の的となりました。幅広いカテゴリーの商品を扱っていますので、こうした今までとは違うお客様との接点を増やすことができる機会をもっと大事にしていきたいですね。 ―― 御社に販売を取り扱ってほしいとのご依頼も多いのではないでしょうか。 榎 大変ありがたい話で、ご依頼いただけるケースももちろんございますが、それ以上に、展示会やガジェット好きのお客様がついていらっしゃるクラウドファンディングサイトなどに、日本だけでなく海外も含めて常に目を光らせています。 「AI」をキーワードにした商品やサービスがこれからもっと充実してきます。そうしたものを探し出し、日本できちんと販売することが我々の責務。一人でも多くのお客様にご理解いただくために、メーカー様、販売店様としっかり協力しながら、宣伝やプロモーション、また、売り場を通してお客様の目にベネフィットをしっかりとお伝えして、普及を促進していきます。 IoT、AI、スマート家電などそれぞれに成長はしていますが、まだまだ一部の好きな人やリテラシーの高い人にしか使われていないケースが少なくないのが実情です。時間を経ることで、機能や使いやすさはさらに進化しており、一般の方にも違和感を覚えないものがどんどん増えています。 よく指摘されることですが、日本の市場は海外から見るとかなり難解なようで、特に小売については複雑な規則などを理解することに大変苦労すると言われています。我々がその間に入ってしっかりサポートを行いながら、SB C&Sにお任せいただくことの価値も訴えて参ります。
PHILE WEB ビジネス編集部